犬の肺高血圧症とは?5つの原因別タイプと症状・治療法を解説

犬の肺高血圧症は、肺動脈にかかる圧力が異常に上昇することで、全身にさまざまな症状を引き起こす循環器疾患です。この記事では、原因(病態)に基づく5つの分類に沿って、それぞれの特徴・症状・治療法をわかりやすくご紹介します。


肺高血圧症とは?

肺高血圧症は、肺動脈圧が高くなる状態の総称で、放置すると心不全や失神、重度の場合は命に関わることもあります。犬の肺高血圧症は**「二次性(他の疾患に伴う)」**であることがほとんどで、原因によって以下のように分類されます。


犬の肺高血圧症:5つの原因別分類

① 肺動脈性肺高血圧症(PAH:Pulmonary Arterial Hypertension)

特徴

肺動脈自体の構造や機能の異常により、血管が狭くなったり硬くなったりして血圧が上昇するタイプです。

主な原因

  • 特発性(原因不明だがまれに発生)
  • フィラリア症(肺動脈に寄生し、血管を障害)

症状

  • 呼吸困難
  • チアノーゼ
  • 失神(重度)

治療

  • シルデナフィルなどの血管拡張薬
  • 原因除去(フィラリア駆虫)

② 左心疾患由来の肺高血圧症(LHD-PH)

特徴

左心房や左心室に異常があると、肺からの血液がうまく流れず、肺うっ血から肺動脈圧が上昇します。犬では最も多いタイプです。

主な原因

  • 僧帽弁閉鎖不全症(MR)
  • 拡張型心筋症
  • 左心不全

症状

  • 咳(特に夜間や運動時)
  • 呼吸困難
  • 運動を嫌がる

治療

  • 心臓病の治療(ACE阻害薬、ピモベンダンなど)
  • 利尿薬で肺うっ血の緩和
  • シルデナフィルは慎重使用

③ 呼吸器疾患・低酸素性肺高血圧症(CHD-PH)

特徴

慢性の呼吸器疾患により、肺胞での酸素交換がうまくいかず、慢性的な低酸素状態に。その結果、肺血管が収縮し、肺高血圧を引き起こします。

主な原因

  • 慢性気管支炎
  • 肺線維症
  • 上気道閉塞(短頭種気道症候群など)

症状

  • ゼーゼー、ヒューヒューという異常呼吸音
  • 長引く咳
  • 呼吸困難、興奮時のチアノーゼ

治療

  • 原因疾患の管理(吸入療法、抗炎症薬など)
  • 酸素療法
  • 肺血管拡張薬の併用も検討

④ 血栓・血管閉塞性肺高血圧症(CTEPH:Chronic Thromboembolic PH)

特徴

肺の血管に血栓が詰まることで血流が阻害され、局所的に肺動脈圧が上昇します。急性の場合は「肺塞栓症」と呼ばれることもあります。

主な原因

  • 血液凝固異常
  • クッシング症候群などの基礎疾患
  • 外傷や手術後の血栓形成

症状

  • 突然の呼吸困難
  • チアノーゼ
  • ショック症状(重度)

治療

  • 抗凝固療法(ヘパリン、ワルファリンなど)
  • 酸素療法
  • 原因疾患の管理

⑤ 多因子性・不明原因の肺高血圧症(Multifactorial or Unclear PH)

特徴

複数の要因が絡み合っている場合や、明確な原因が特定できないケース。高齢犬では、複数の疾患(心臓+呼吸器など)が関与することもあります。

主な状況

  • 高齢犬に多い
  • 複数の軽度疾患が重なって肺高血圧に至る

症状・治療

  • 症状は上記と共通
  • 個別に原因を絞り込み、総合的に治療を行う必要あり

まとめ:早期発見と正確な分類がカギ

犬の肺高血圧症は、原因によって分類・治療法が大きく異なります。原因を見極めたうえで適切な治療を行うことが、愛犬の生活の質(QOL)を守るためにとても重要です。

咳や息切れ、失神などの症状が見られたら、早めに動物病院での検査をおすすめします。

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