【気づけば水をたくさん飲んでる…?】― 犬のクッシング症候群について―
はじめに:水をたくさん飲む=老化ではないかも?
「最近、うちの子がやたら水を飲むようになった」「おしっこの量も増えた気がするけど、年のせいかな?」
そんな飼い主さんの気づきが、病気の早期発見につながることもあります。特に中高齢の犬で多くみられる「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」は、水を飲む量が増えることで気づかれることの多い病気のひとつです。
本記事では、クッシング症候群の主な症状、原因、診断、治療法について解説します。
クッシング症候群とは?
クッシング症候群は、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌されることによって起こる病気です。
コルチゾールは本来、ストレスや代謝、免疫機能を調整する重要なホルモンですが、過剰になると体に様々な悪影響を及ぼします。
よく見られる症状
クッシング症候群の症状はゆっくりと進行し、「年齢のせい」と見過ごされることも多いのが特徴です。
よく見られる初期症状
- 水をたくさん飲む(多飲)
- おしっこの量が増える(多尿)
- 食欲が異常に旺盛になる
- お腹がぽっこりと膨らんでくる(腹部膨満)
- 毛が抜ける、左右対称の脱毛
- 皮膚が薄くなり、黒ずむ
- 呼吸が浅く速い
- 筋力の低下、元気がない
注意したい進行例
- 糖尿病を併発する
- 高血圧や膵炎などのリスクが上がる
- 免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなる
原因は3つのタイプに分けられる
クッシング症候群は大きく以下の3タイプに分類されます:
1. 下垂体性クッシング症候群(最も多い)
- 下垂体の腫瘍により、コルチゾールを刺激するホルモン(ACTH)が過剰に分泌される。
- 全体の80〜85%を占めます。
2. 腫瘍性クッシング症候群
- 副腎自体に腫瘍ができ、コルチゾールが過剰に分泌される。
- 全体の15〜20%ほど。
3. 医原性クッシング症候群
- ステロイド薬の長期使用によるもの。
- 投薬による副作用として発症することがあります。
診断には複数の検査が必要
クッシング症候群は一つの検査だけでは診断できないことが多く、以下のようなステップで進めます:
- 血液検査:ALP(肝酵素)の上昇、コレステロールの上昇、白血球の変化など
- 超音波検査:副腎サイズの増大
- 尿検査:尿比重の低下
- ACTH刺激試験:副腎の反応を見る検査
- 低用量デキサメタゾン抑制試験:コルチゾールの抑制反応を確認
治療法はタイプによって異なる
下垂体性の場合
- 内服薬(トリロスタン)によるコルチゾール分泌の調整が一般的
- 定期的な血液検査とモニタリングが必要です
腫瘍性の場合
- 外科的に腫瘍を摘出(リスクを伴うため慎重な判断が必要)
医原性の場合
- ステロイドの減量や中止(自己判断での中止は危険)
クッシング症候群と上手に付き合うために
クッシング症候群は完治が難しい慢性疾患ではありますが、早期に気づいて治療を始めれば、症状をコントロールしながら生活の質を保つことができます。
水をたくさん飲む、食欲が異常にある、毛が抜けてきたなど、「ちょっと気になる変化」があったときは、早めに動物病院に相談しましょう。
まとめ
- 水をたくさん飲む・おしっこが増える症状は、クッシング症候群のサインかも。
- ゆっくり進行するため、老化と見分けがつきにくい。
- 診断には複数の検査が必要。治療は投薬が中心。
- 継続的な管理により、元気な日常を取り戻すことも可能。
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