【湘南・茅ヶ崎エリア】海辺のお散歩で要注意!犬の熱中症について徹底解説

湘南の海、犬にも危険がいっぱい?

湘南・茅ヶ崎エリアでは、海岸沿いのお散歩や浜辺遊びを楽しむワンちゃんが多いです。ですが、夏本番を迎える前でも「熱中症」で動物病院に運ばれてくるケースもあります。
特に海辺の砂浜やアスファルトは、日差しで驚くほど高温になり、犬にとっては負担となります。

この記事では、湘南・茅ヶ崎エリアの飼い主さんに知っておいてほしい「犬の熱中症」の基礎知識から、症状の重さによる分類、原因、応急処置、動物病院での治療まで分かりやすくご紹介します。


犬の「熱中症」とは?

熱中症とは、外気温や湿度の影響で体温調整がうまくできなくなり、体温が異常に上昇する状態です。
犬は汗腺が発達しておらず、パンティング(口を開けてハァハァする呼吸)」でしか熱を逃がせません。そのため気温や湿度が高いと体温がどんどん上昇し、熱中症に陥りやすいのです。

熱中症の重症度による分類

用語定義代表的症状重症度
熱射病(Heat Stroke)重度の熱中症。中枢神経障害・DIC・多臓器不全を伴う虚脱、失神、痙攣、意識障害、ショック症状★★★★★
熱中症環境により体温調節が破綻した状態。軽症~重症まで幅広いパンティング、活力低下、粘っこいよだれ★〜★★★
熱痙攣(Heat Cramps)脱水による筋肉の不随意収縮四肢の震え、筋肉のピクつき(稀)

※犬では「熱痙攣」のみ単独で診断されることは少なく、軽度熱中症の一環として現れることが多いです。

熱中症を引き起こす要因

犬の熱中症は、外気温の高さだけでなく、湿度が高いことで体の熱を逃がしにくくなることが要因となります。風通しの悪い場所や車内、キャリーケース内では熱がこもりやすく危険です。
都市部では排気ガスやヒートアイランド現象により地面や周囲の温度がさらに上昇します。
こうした環境下で散歩すると犬は地面からの照り返しの影響も受けやすくなります。
加えて脱水状態にあると体温調節が難しくなり、熱中症のリスクが一気に高まります。

外気温アスファルト表面温度浜辺(砂)温度
25℃約42℃約40℃
30℃約52℃約55℃
35℃約62℃約65℃

実は海よりも都内の方が熱中症になりやすい?

海辺は砂の照り返しや直射日光で地表温度が上がりやすい反面、海風による換気と湿度の低下で体温放散がしやすい環境です。
一方、都内はビル群による熱のこもり(ヒートアイランド現象)や風通しの悪さ、車の排気ガスによる空気汚染が加わり、外気温以上に犬の熱中症リスクが高まります。
特に夜間でも気温が下がりにくいため、都市部の方が熱中症発症率は高い傾向があると考えられます。

熱中症の病態機序

犬の熱中症では、「単なる体温上昇」ではなく、持続する高体温が全身の恒常性維持機構を次々と破綻させることが重篤化の原因です。以下に病態進行の順序を示します。

1. 【発汗できないため体温が上昇】

犬は主にパンティング(呼吸)で熱を放散しますが、湿度や気温が高いと放熱困難 → 体温上昇開始

▶ 体温:39.5℃~40.5℃

  • パンティング増強
  • 動揺、落ち着きのなさ
  • 交感神経亢進→粘稠度の高い涎

2. 【循環血流の再分配と虚血発生】

体温が41℃以上になると、熱放散のため末梢血管が拡張 → 相対的な血圧低下 → 臓器低灌流・虚血

▶ 臓器ごとの変化

  • 脳:血流低下 → 神経症状(ふらつき、意識低下)
  • 腎:糸球体ろ過量低下 → 急性腎障害がはじまる
  • 腸:粘膜虚血 → バリア破綻(内毒素血症への道)

3. 【内毒素(エンドトキシン)血症の発生】

腸管バリアが崩壊 → 腸内細菌由来の内毒素(LPS)が血中流入全身性炎症反応症候群(SIRS)

▶ 結果

  • 発熱の持続・悪化(内因性熱産生
  • 好中球活性化 → 酸化ストレス
  • 肝障害・DIC発症リスク増加

4. 【DIC(播種性血管内凝固)の誘発】

内毒素により単球・マクロファージが活性化 → 組織因子放出→凝固カスケード活性化 → 微小血栓形成 → 各臓器虚血悪化

▶ 合併症

  • 皮下出血・血尿・消化管出血
  • 多臓器不全(MODS)進行
  • 末期DIC:線溶優位 → 出血傾向

5. 【横紋筋融解症(Rhabdomyolysis)発生】

熱変性により骨格筋細胞崩壊 → ミオグロビン血症・ミオグロビン尿 → 腎尿細管障害を助長 → AKI進行

6. 【急性腎障害(AKI)の確立

循環低下+ミオグロビン尿により尿細管壊死 → 乏尿/無尿 → 電解質異常(高K血症)→ 不整脈・心停止リスク上昇

7. 【中枢神経不可逆障害】

体温42〜43℃持続で熱ショック蛋白(HSP)発現限界突破 → 脳浮腫・神経細胞壊死 → 昏睡・死亡

犬の熱中症の主な症状

軽度

  • 体温39〜40℃程度
  • 激しいパンティング(パンティング数が増加)
  • 粘稠性のあるよだれ増加(交感神経優位)
  • 落ち着きがない、不安そうな行動
  • 粘膜充血

中等度

  • 虚脱・ふらつき
  • 嘔吐・下痢(しばしば血便)
  • 脱水
  • 粘膜蒼白

重度

  • 体温42℃以上
  • 失神、意識消失
  • 痙攣発作
  • 出血傾向

飼い主ができる応急処置

熱中症は早期発見・早期対応が治療成功のとなります。「外気温・湿度が高い」という条件下で「止まらないパンティング」「粘稠性のある涎」が出てきたら熱中症を疑い以下の対応を検討してください。

  • 日陰・風通しの良い場所へ避難
  • 水道水を使った体表冷却(特に頸部・腹部・内股):冷た過ぎる水(氷水など)はNG(末梢の血管収縮を引き起こし、体内の熱が逃げづらくなる)
  • コンパクト扇風機・車内であればエアコンで風を当てる
  • 飲水が可能なら水を与える(無理強いNG)

動物病院が近くにある場合はすぐに病院へ受診しましょう。

動物病院での処置

熱中症は軽度のものから重篤なものまで様々です。動物病院では、来院時の容態を迅速に判断し、それに見合った初期対応を実施する事が治療成功の鍵となります。

来院時にはまずトリアージを行い、呼吸状態・意識レベル・末梢循環を即時評価します。
循環動態の評価には迅速超音波(FAST scan)を活用し、心腔内ボリュームや収縮力、心臓の構造異常の有無を即座に把握します。
心腔内ボリュームが減少している症例では血管確保とショック量の輸液(90ml/kgを目安にボーラス)を開始し、持続点滴への移行を視野に入れます。
酸素化は必須で、チアノーゼやストライダーを伴う短頭種では上気道閉塞を強く疑い必要に応じて鎮静・挿管・人工呼吸器管理を検討します。

痙攣や意識低下などの神経症状がある場合は、体温変化をモニターしつつ脳圧管理(グリセロールやマンニトール)と鎮静(ジアゼパム等)を行います。

冷却は常温での浸水・濡れタオル・浣腸・胃洗浄・送風などを考慮し、39.5℃前後までの積極的冷却を目指します。
消化管バリア破綻による内毒素血症を予防するため、予防的抗生剤(広域)の早期投与を行い、さらにDICや血栓形成を想定し、血栓予防薬(低分子ヘパリン等)の使用も検討されます。

まとめ

犬の熱中症は、わずかな油断が命取りになる怖い病気です。人と違って汗で体温調整ができないため、暑さや湿気にとても弱く、特に夏の車内放置や暑い時間帯の散歩は大変危険です。

大切なのは早期の気づきと迅速な対応、そして何より予防です。
「ちょっとだけだから大丈夫」が、取り返しのつかない事態につながることもあります。

暑い季節は、こまめな水分補給と涼しい環境の確保を心がけましょう。

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