犬の健康は腸内環境から!腸活に必要なプレバイオティクスについて

近年、腸内環境の維持が人だけではなく動物においても全身の健康に大きく寄与することが広く知られるようになり、犬の「腸活」に注目が集まっています。その中でもプロバイオティクスが特に注目されている事については前回の記事でお伝えさせて頂きました。腸活する上で善玉菌を取り込む事は大切ですが、善玉菌をいかに育てて腸に定着させるかを考えていかなければなりません。それに必要なのが「プレバイオティクス=善玉菌の餌」です。プレバイオティクスは、腸内の善玉菌を増やし、バランスを整えるための食物成分であり、これによって免疫力が向上し、消化吸収が改善されます。今回はそんなプレバイオティクスに関する記事を書かせて頂きます。

キーワードは「食物繊維」

食物繊維とは?

「食物繊維は体に良い!」「“炭水化物は悪者!」何となくそんな風潮があるかもしれませんが、実は食物繊維は炭水化物に含まれます。
炭水化物とは、「糖質」と「食物繊維」の総称です。炭水化物のうち、体内で消化・吸収され、エネルギー源となるものを「糖質」、体内で消化・吸収されずほとんどエネルギー源にはならないものを「食物繊維」といいます。食物繊維も吸収されて、体そのものの栄養となりそうなイメージですが、実はそうではありません。腸内細菌を介して便や腸内環境を整える働きがあります。食物繊維には可溶性(水溶性)食物繊維と不溶性食物繊維に分かれます。

食物繊維のはたらき

食物繊維の便への直接的な働きとして

  • 不溶性 : 腸内容物のカサを増すことで腸の蠕動運動を促し、正常な腸内通過時間を保つ。また緩い便の水分を吸着する事で糞便の硬さと容積を増加させる。
  • 可溶性:小腸を通過する際に吸着した水分を硬い便に供給することで便秘の改善が期待される。

があげられます。

不溶性繊維は、一般的には便通を改善しますが、特に猫では便秘を助長させる可能性もあるため、与える量の調節は必要です。


そういった食物線維の中でも、腸内細菌の餌となり、腸内フローラに有益となるものを『プレバイオティクス』と言います。

プレバイオティクスの正体

食物繊維の中でも、善玉菌の餌となり、腸内環境において有益となるものを「プレバイオティクス」と言いますが、これはほとんどの可溶性繊維と一部の不溶性繊維がこの役割を果たします。

Pre/Proの違い

PreもProも「前に」という意味があります。Preはある地点から前に(昔に・過去に・befor)、Proはある時点から前に(前進・未来に・forward)という意味があるそうです。

イメージ的にプレバイオティクスで餌を撒いて準備しておいて、プロバイオティクスで善玉菌を入れる事で前進する。そんなイメージが良いかもしれません笑

プレバイオティクス・プロバイオティクスの両方を合わせてシンバイオティクスと呼びます。

プレバイオティクスの定義

プレバイオティクスの定義として
1:消化管上部で加水分解、吸収されない。
2:大腸に共生する一種または限定された数の有益な細菌(ビフィズス菌など)の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進し、または代謝を活性化する。
3:大腸の腸内細菌叢(フローラ)を健康的な構成に都合の良いように改変できる。
4:宿主の健康に有益な全身的な効果を誘導する

といった内容が挙げられます。

プレバイオティクスは発酵性繊維である

サイリウムを除く可溶性繊維の多くは、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」の栄養源となり発酵するため、「発酵性繊維」と呼ばれます。代表的なものとしてオリゴ糖と呼べばわかりやすいですかね?オリゴ糖にはガラクトオリゴ糖(GOS)やフラクトオリゴ糖(FOS)マンナオリゴ糖(MOS)アラビノキシランオリゴ糖(AXOS)などがあります。発酵性繊維は他にもペクチンやβグルカンやアルギン酸や難消化性デキストリンなどがあります。一部不溶性繊維の中でもレジスタントスターチなどは発酵性繊維に分類されます。
これら発酵性繊維は、多くの「悪玉菌」には利用されないため、善玉菌に優位な環境を作ることが期待されます。(ただし、これは分かりやすくしたフレーズであり、厳密には正確ではありません。)

最近ではフラクトオリゴ糖の1種である「ケストース」が腸内細菌コントロールに役立つ「高機能プレバイオティクス」の代表格として注目されています。(ただし、オリゴ糖の種類によって影響を受ける腸内細菌の種類は微妙に異なります。よって1種類のオリゴ糖と、複数種のオリゴ糖の併用では、後者の方が腸内多様性の向上に貢献する他、特定の細菌グループの突出を回避できるなど、大きなメリットがあります。)

発酵性繊維の働き

これら発酵性繊維に細かな差異はあるものの、一概にビフィズス菌や乳酸菌や酪酸菌といった有益菌を増進し、腸内の『短鎖脂肪酸』を増加させる事が知られています。この短鎖脂肪酸は「腸上皮の栄養」「腸上皮細胞間接着の亢進」「ムチン産生亢進による粘膜バリアの強化」「腸内pH低下による病原性菌の増殖抑制」といった、腸にとって有益な作用がある事がわかっています。
さらに近年では『制御性T細胞の分化誘導などを介した抗炎症作用』が報告されるようになっています。この制御性T細胞が減少する事と炎症性腸疾患やアレルギー性疾患といった病気の発症が関連すると考えられています。また、短鎖脂肪酸の1種である「酪酸」は大腸の粘膜上皮細胞の代謝を促進し、血管から送られてくる酸素を消費させ、大腸内の酸素濃度を低下させる効果があります。大腸内の酸素濃度を低下させる事は、有益菌が腸内で生きやすい環境を提供してくれます。

プレバイオティクスの種類

プレバイオティクスの種類

プレバイオティクスとなる発酵性繊維は、繊維の長さによって、善玉菌から分解される速度が異なります。繊維の長さからおよそ3つのグループに分類されます。

長さが短い可溶性繊維はフラクトオリゴ糖(イヌリン・ケストースなど)、マンナオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などあります。長さが長い可溶性繊維としてはβグルカンやペクチン、不溶性繊維としてはレジスタントスターチなどがあります。長さが短いプレバイオティクスは腸の入り口付近、長さが長いβグルカンやペクチンは腸の中間地点あたり、不溶性繊維であるレジスタントスターチなどは腸の最奥に届いて発酵すると知られています。

単に発酵性食物繊維といってもこのように特徴が異なり、善玉菌への作用の仕方も種類によって変わります。

摂取量の目安

1日の投与量としては、イヌリンは0.5g/kg、フラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖は0.1〜0.2g/kg、マンナオリゴ糖は0.1〜0.5g/kg程度が基準です。最初は少量から始めて、便の状態を観察し、適切な量を見極めるのが良いでしょう。

Warning

可溶性繊維は与えすぎると軟便や下痢になる可能性があります。多ければ良いという訳ではないので注意が必要です。

プレバイオティクスを含む食材

かぼちゃ・ブロッコリー・バナナにはイヌリン(フラクトオリゴ糖)が、リンゴ(皮なし、種なし)・にんじん・さつまいもにはペクチンと呼ばれる可溶性繊維が多く含まれています。ごぼうやバナナにはケストース(フラクトオリゴ糖)を含みます。豆類・乳製品にはガラクトオリゴ糖が、穀物(ライ麦・小麦ふすま・オート麦など)の外皮にはアラビノキシランオリゴ糖が豊富に含まれています。

トッピング量の目安

総合栄養食に野菜などをトッピングする際の目安量は、ドッグフード全体の10〜20%以下に抑えることが理想的です。これにより、総合栄養食のバランスを崩さずに栄養補給や食感の変化を楽しめます。具体的には

  • 小型犬(5kg以下):1日の食事量に対して10〜20g
  • 中型犬(5〜15kg):1日の食事量に対して20〜40g
  • 大型犬(15kg以上):1日の食事量に対して50〜100g

なお、消化性を良くするために、野菜は細かく刻んで、茹でる・蒸すなどの処理を施して柔らかくしてからトッピングすると良いでしょう。

まとめ

  • プレバイオティクスの正体はオリゴ糖などの可溶性食物繊維
  • 善玉菌の餌となり、善玉菌が腸内に定着するようになる
  • 善玉菌の餌となり、短鎖脂肪酸を作り出す
  • 短鎖脂肪酸は腸粘膜にとって有益な作用があり、過剰免疫を抑制する働きがある

藤沢、茅ヶ崎エリアで、愛犬の腸活についてもっと詳しく知りたい方は、湘南Ruana動物病院までご連絡ください。

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