ワクチン接種後は安静に!急性アナフィラキシーの症状と初期対応について

はじめに
犬猫ちゃん達の健康を守るために必要なワクチン接種。しかし、ごくまれにワクチン接種後に急性アナフィラキシー(アレルギー反応)が発生することがあります。アナフィラキシーは非常に危険で、迅速な対応が必要です。この記事では、ワクチン接種後の急性アナフィラキシーについて、症状、原因、治療、対応策について詳しく解説します。
急性アナフィラキシーとは?
アナフィラキシーとは、急激で重篤なアレルギー反応のことを指します。1型アレルギー反応というIgE抗体が関与し、肥満細胞から大量のヒスタミンなどの化学物質が放出される事により症状が現れます。ヒスタミンは血管拡張作用があり、この反応が過剰に起こると全身の血圧が急激に低下し、ショック状態(アナフィラキシーショック)を引き起こすことがあります。

【1型アレルギーの発生機序】
なぜワクチン接種後にアナフィラキシーが発生するのか?
アナフィラキシーは、ワクチンに含まれる成分に対する過剰な免疫反応によって引き起こされます。ワクチンは病原体の一部を体内に注入し、免疫系を刺激して免疫力を高めますが、免疫系が過剰に反応することがあります。この過剰反応により、急性アナフィラキシーが発生するのです。
アナフィラキシーのリスクを高める要因
- 過去のアレルギー反応
以前にワクチン接種でアレルギー反応を示した子は、再度接種後にアナフィラキシーを発症するリスクが高いです。 - 免疫系の過敏性
免疫系が過敏な状態だと、通常のワクチンでも異常な反応を示すことがあります。 - ワクチンの種類や成分
一部のワクチンは他のものに比べてアレルギー反応を引き起こしやすいことがあります。また、特定のアジュバント(免疫反応を強化するために加えられる物質)が関与している場合もあります。 - 犬猫の体調や年齢
健康状態が不安定な場合や免疫系が弱っている場合、アナフィラキシーが発症しやすくなります。
アナフィラキシーの症状
アナフィラキシーは急激にアレルギー反応を示すため、ワクチンの場合は接種後1時間以内に症状が出る事が多いです。ヒスタミンによる血管拡張が原因となる症状のため、血圧低下による活動性の低下や虚脱、下痢や嘔吐(消化管への血流低下)、呼吸促迫(肺胞出血や気管支痙攣)などが認められます。全身性の場合、口腔粘膜の蒼白が認められる場合もあります。
アナフィラキシーと遅延型アレルギーの中間的な反応を示す症例もおり、その場合、ワクチン接種6時間程度以内に下痢や嘔吐などのアナフィラキシー様症状が見られるパターンもあります。その場合はアナフィラキシーとしての対応が必要です。
また、犬と猫で急性アナフィラキシーの出やすい症状が異なります。犬では肝臓・消化管への反応が起こりやすく、血下痢や嘔吐、胆嚢浮腫、肝酵素の上昇が認められます。猫では肺・気管支への反応が起こりやすく、肺胞出血や気管支痙攣に伴う呼吸困難などの呼吸器症状が見られます。

急性アナフィラキシーの治療
急性アナフィラキシーの症例は早急な治療介入が必要です。静脈内点滴とエピネフリン(アドレナリン)の投与が第一選択です。エピネフリンは血圧を上昇させる・心拍出量を上昇させる・肥満細胞からヒスタミン放出を抑制する・気管支痙攣を緩和するといった作用が期待されます。静脈内点滴も重要で、血圧やサチュレーション波形や心ボリュームの主観的評価に基づいて輸液量を決定します。補助療法としてはステロイド剤による消炎効果でヒスタミン放出を抑制したり、抗ヒスタミン剤によるヒスタミン受容体のブロックなどを検討します。

急性アナフィラキシーを引き起こさないための工夫
ワクチン接種に伴う急性アナフィラキシーは接種のやり方を工夫する事で発症率を下げる事ができます。
1、ワクチン接種は体調の良い日を選んで受診する
健康状態が不安定な場合や免疫系が弱っている場合はアナフィラキシーが発症しやすくなります。また、下痢や嘔吐がある状態でワクチン接種すると、その後に下痢や嘔吐をした際にワクチン接種によるアナフィラキシー反応なのか元々の消化器症状が原因なのか分からなくなります。
2、ワクチン接種後は激しい運動とシャンプーを避ける
高体温な状態だと免疫系が過敏な状態となり、通常のワクチンでも異常な反応を示すことがあります。病院での身体検査で、体温が高いとワクチン接種を見送りにする場合があるのはこの為です。また、接種後の激しい運動やシャンプーなどによっても体温上昇の原因となるため、これらも避けましょう。
3、ワクチンを接種するのは午前中にする
ワクチンによる急性アナフィラキシーは接種後1時間以内に発症しやすいです。また、遅延型アレルギーや中間タイプのアレルギー反応は接種後6時間程度でも発症します。午後の時間帯での来院では、万が一アレルギー反応が出た場合に病院が営業時間外となる可能性があります。時間にもゆとりを持って接種に臨みましょう。
4、ワクチンアレルギーが出た子は抗体価検査や事前に免疫抑制をかける
以前にワクチン接種でアレルギー反応を示した子は、再度接種後にアナフィラキシーを発症するリスクが高くなる可能性があります。そのような場合には抗体価検査(採血を行い、抗体が残っているかどうかを調べる検査)を実施する事でワクチン接種を回避するか、ワクチン接種30分ほど前に免疫抑制剤(ステロイド)の投薬を行い、アレルギー反応が出づらくさせる工夫をする事が望まれます。
まとめ
ワクチン接種は犬や猫の健康を守るために非常に重要ですが、まれに急性アナフィラキシーのような危険な反応が起こることがあります。アナフィラキシーが発生した場合、迅速な対応が命を救う鍵となります。予防や早期発見のためには、接種後の観察や獣医師との連携が大切です。ご家族が安全で健康な生活を送るために、ワクチン接種後の注意を怠らないようにしましょう。
関連記事