知っているようで意外とよく知らない?犬の混合ワクチンについて

ワクチンとは?

ワクチンとは、病気を予防するための薬の一種です。簡単に言うと、体が病気にかからないように「準備」をしておくためのものです。ウイルスや細菌などの外敵が体の中に入ると、侵入してくる病原体と戦うため「抗体」を作って攻撃をします。これを「免疫」と言います。ワクチン接種はこの免疫のしくみを応用したもので、病原性を弱めたもしくは病原性を完全に無くした細菌やウイルスを体内に入れると、体の免疫システムがその病気に対する「記憶」を持ち、次にその病気のウイルスや細菌が体に入ったときに、すばやく対応できるようになります。これにより、その病気にかかりにくくなり、もしかかったとしても軽い症状で済むようになります。

犬の混合ワクチンの種類

犬の接種すべきワクチンは「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」の2つのタイプが存在します。コアワクチンとは生活環境に関わらず全ての犬が接種すべきワクチンとされ、犬パルボウイルス感染症犬ジステンパーウイルス感染症犬アデノウイルス感染症(1型:伝染性肝炎、2型:伝染性喉頭炎)の3つがこれに該当します。ノンコアワクチンとは、暮らす地域などにより感染するリスクに応じて接種すべきワクチンとされています。パラインフルエンザウイルス感染症コロナウイルス感染症レプトスピラ感染症ボルデテラ感染症などがこれに該当します。多くの病院で取り扱われている6種ワクチンにはコアワクチン(4種類)、パラインフルエンザウイルス感染症、コロナウイルス感染症が含まれています。

混合ワクチンの接種する時期や回数

病院によって考え方は様々ではありますが、当院ではWSAVA(世界小動物獣医師会)のワクチネーションガイドラインが推奨している混合ワクチンの接種時期や間隔をもとに実施しています。

子犬の混合ワクチンの接種時期

生まれたばかりの子犬は母犬の初乳から譲り受ける「移行抗体」が得られていると言われています。この移行抗体によって生まれたばかりの子犬は感染症から身を守ります。移行抗体は子犬の成長とともに消えていきますが、移行抗体が残っている内はワクチンを打っても子犬自身の免疫獲得が十分に得られません。

個体差はあるものの移行抗体が消失し始めるのは6〜8週齢からとされており、そのために初回のコアワクチンは6〜8週齢を目安に接種します。もちろんこの時期のワクチン接種は残存する移行抗体の影響で十分な免疫獲得は望めません。移行抗体が消失し、子犬の免疫システムが独自に反応できる状態となるには16週齢を過ぎてからと言われています。その為、ワクチン接種は初回接種後、16週齢を超えるまで2〜4週間隔でおこないます。その後は6ヶ月〜12ヶ月後に、確実に免疫を獲得させるためのブースト接種が推奨されます。

成犬の混合ワクチンの接種時期

2010年代中盤までは毎年のワクチン接種が推奨されておりました。しかし2015年頃から、犬のコアワクチンに関して3年に1回の接種が推奨されるようになりました。この変更は、ワクチンの効果が長期間持続することが確認されたためであり、犬の健康や副作用のリスクを考慮してのものです。一方で、国内におけるペットホテルやトリミング施設の利用には、1年以内のワクチン接種証明書が必要なケースが多く見られます。そのため、毎年のワクチン接種の代わりに抗体価検査を実施するという選択肢もでてきました。

抗体価検査とは?

抗体価検査は血液サンプルから、体の中に抗体がどれくらい残っているかどうかを調べる事ができます。結果が出るまでに数日〜1週間ほどかかったり、病院によってはワクチン接種以上の費用がかかることもありますが、接種を見送りたい場合には有効な検査です(もちろん、抗体価が低い場合にはワクチン接種が必要となりますが…)最近では、宿泊施設やドッグランなどの利用時に混合ワクチンの証明書代わりに1年以内の抗体価検査結果の提示でも受け入れてくれる場所も増えているようです。

ワクチン接種で気を付ける事

免疫が獲得できるしくみによってさまざまな感染症を防いでくれるワクチンのように思えますが、注意したいのはワクチン接種による副反応です。接種後、虚脱や呼吸困難や嘔吐下痢がおよそ1時間以内にあらわれる急性アナフィラキシー反応や、数時間経過してから現れる顔面浮腫や皮膚のかゆみなどの遅延型アレルギー反応があります。こういった副作用に備えて1日経過を見守れる日の午前中に接種を受け、接種後は過度な運動やシャンプーは避けて安静に過ごしましょう。

関連記事