犬と猫の膵外分泌不全(EPI)とは?症状・診断・治療まで詳しく解説!
はじめに
犬や猫が慢性的な下痢や体重減少を繰り返している場合、「膵外分泌不全(EPI:Exocrine Pancreatic Insufficiency)」の可能性があります。EPIは膵臓が消化酵素を十分に分泌できなくなる病気で、消化不良を引き起こし、適切に栄養を吸収できなくなります。
本記事では、EPIの原因・症状・診断方法・治療法について詳しく解説し、飼い主さんができる管理方法もご紹介します。
膵外分泌不全(EPI)とは?
膵臓には大きく2つの働きがあります。
1. 内分泌機能:血糖を調整するインスリンやグルカゴンを分泌
2. 外分泌機能:食べ物の消化を助ける酵素(リパーゼ・アミラーゼ・プロテアーゼ)を分泌
EPIはこの「外分泌機能」が低下する病気で、脂肪・タンパク質・炭水化物を適切に消化できなくなります。結果として、栄養不足や消化不良を引き起こし、体重減少や下痢の原因となります。
EPIの原因
EPIの主な原因として、以下のものが挙げられます。
膵実質の萎縮(PAA: Pancreatic Acinar Atrophy)
• 特に犬で多い原因
• 若齢期(1〜5歳)の犬に多く、遺伝的要因が関与
• ジャーマン・シェパード、ラフ・コリー、イングリッシュ・セッターなどで発症率が高い
膵炎の後遺症
• 犬・猫ともに慢性膵炎の進行により膵外分泌機能が低下
• 中高齢の動物で発症しやすい
• 特に猫ではこの原因が最も多い
• 慢性膵炎は炎症性腸疾患(IBD)や胆管炎と併発することが多い
先天性異常や腫瘍
• 生まれつき膵臓が正常に発達しないケース
• 腫瘍が膵臓の外分泌機能を阻害することもある
EPIの症状
EPIになると、栄養吸収がうまくできず、次のような症状が現れます。
慢性的な下痢(脂肪便・灰色や黄色っぽい便)
体重減少(食欲は正常または増加)
異常に多い食欲(多食)
毛ヅヤの低下・被毛のパサつき
食糞・異食症(ゴミを食べる、草を大量に食べるなど)
お腹の鳴り(グルグル音がする)
おならの増加
特に「食欲旺盛なのに体重が減る」という特徴があり、注意が必要です。
EPIの診断方法
EPIの診断には、膵外分泌機能を評価する血液検査が重要です。
(1)TLI(トリプシン様免疫活性)検査
• 最も信頼性が高い血液検査
• TLIの値が低いとEPIの可能性が高い
(2)糞便検査
• 脂肪便(未消化の脂肪)やデンプンが検出されるかを確認
• 参考にはなるが、確定診断にはTLI検査が必要
(3)ビタミンB12(コバラミン)検査
• EPIの犬猫ではビタミンB12が低下することが多いため、併せて測定する
EPIの治療と管理
EPIは完治する病気ではありませんが、適切な治療と管理で症状をコントロールできます。
(1)消化酵素の補充
• **パンクレアチン(膵酵素製剤)**を食事に混ぜる
• 消化吸収を助け、栄養不足を改善
(2)食事管理
• 低脂肪・高消化性の食事を選ぶ(療法食が推奨される)
• 少量ずつ頻回に食べさせる
• 腸内環境を整えるためにプレバイオティクス・プロバイオティクスを活用
• 例:サイボミックス、ベルキュアボウなど
(3)ビタミンB12(コバラミン)補充
• B12が低下すると腸の吸収能力も低下
• 定期的な注射や経口サプリメントで補充
EPIの犬や猫と暮らすポイント
毎日の食事管理が重要! 消化酵素の添加を忘れずに
症状が安定するまで定期的にTLI・B12を測定
腸内環境を整えるため、適切なプロバイオティクスを活用
体重の変化や便の状態を記録し、獣医師と相談しながら管理
EPIは長期的なケアが必要な病気ですが、適切な管理をすれば犬や猫は快適な生活を送れます。愛犬・愛猫の健康を守るためにも、気になる症状があれば早めに動物病院で相談しましょう!
まとめ
• EPIは膵臓の消化酵素が不足する病気で、栄養吸収障害を引き起こす
• 慢性的な下痢・体重減少・食欲増加が主な症状
• TLI検査が確定診断に重要
• 消化酵素の補充と適切な食事管理で症状をコントロール可能
「最近、愛犬・愛猫が痩せてきた…」「便の状態が気になる」という場合は、EPIの可能性も考えて、一度動物病院で検査を受けてみましょう!
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