犬と猫の腸リンパ管拡張症(LPE)とは?症状・診断・治療のポイント
はじめに
犬や猫の慢性的な下痢や体重減少、血液検査でアルブミン(Alb)が低下している場合、「腸リンパ管拡張症(LPE: Lymphangiectasia)」が疑われる事があります。LPEは腸のリンパ管が異常に拡張し、消化管からのタンパク質漏出(PLN:蛋白漏出性腸症)を引き起こす病気です。進行すると低タンパク血症や浮腫、胸水・腹水の原因になるため、早期発見と適切な治療が重要になります。
今回は、LPEの原因・症状・診断方法・治療のポイントについて詳しく解説します!
- 1. はじめに
- 1.1. 腸リンパ管拡張症(LPE)とは?
- 1.2. 腸リンパ管拡張症(LPE)の主な原因
- 1.2.1. (1)特発性LPE(原因不明)
- 1.2.2. (2)二次性LPE(他の疾患が原因)
- 1.3. 腸リンパ管拡張症(LPE)の主な症状
- 1.4. 腸リンパ管拡張症(LPE)の診断方法
- 1.4.1. (1)血液検査
- 1.4.2. (2)超音波検査
- 1.4.3. (3)内視鏡検査・生検
- 1.5. 腸リンパ管拡張症(LPE)の治療のポイント
- 1.5.1. (1)食事療法(低脂肪食)
- 1.5.2. (2)薬物療法
- 1.5.3. (3)ビタミン・ミネラル補充
- 1.6. 腸リンパ管拡張症(LPE)の犬猫と暮らす際の注意点
- 2. まとめ
腸リンパ管拡張症(LPE)とは?
リンパ管は、消化管で吸収された脂肪を運ぶ重要な役割を担っています。LPEでは、この腸のリンパ管が異常に拡張し、リンパ液の流れが滞ることでタンパク質や脂肪の吸収が阻害されるのが特徴です。
その結果、以下のような問題が発生します。
- 栄養吸収不良(下痢・体重減少)
- 血中アルブミン(Alb)低下(低タンパク血症)
- 浮腫・腹水・胸水
LPEは慢性腸症(CE)やIBD(炎症性腸疾患)と関連が深く、犬での発症が多いです。
腸リンパ管拡張症(LPE)の主な原因
LPEは、特発性(原因不明)と二次性(他の病気に続発)に分類されます。
(1)特発性LPE(原因不明)
• 最も多いタイプ(特に犬でよく見られる)
• 小腸のリンパ管が生まれつき拡張しやすい
• ヨークシャー・テリア、ノーフォーク・テリアなどの小型犬に好発
(2)二次性LPE(他の疾患が原因)
• 慢性腸症(特に炎症性腸疾患(IBD))
• 腫瘍(消化管型リンパ腫・腺癌など)
• 消化管寄生虫
慢性腸症(CE)と併発することが多いため、併せて治療が必要になるケースが多いです。
腸リンパ管拡張症(LPE)の主な症状
- 慢性的な下痢(特に脂肪便)
- 体重減少(食欲は正常または増加)
- 低アルブミン血症(Alb低下)による症状
- 浮腫(むくみ)
- 腹水・胸水
- 毛ヅヤの低下
- 嘔吐(IBDを伴う場合)
特に、「食欲があるのに痩せる」「血液検査でアルブミンが低い」「腹水がたまる」といった症状が見られたら、LPEの可能性があります。
腸リンパ管拡張症(LPE)の診断方法
LPEの診断には、血液検査・画像検査・内視鏡生検が重要です。
(1)血液検査
- アルブミン(Alb)低下(低タンパク血症)
- コレステロール・リンパ球の低下(リンパ液喪失による)
Alb低下+慢性下痢がある場合、LPEが疑われます。
(2)超音波検査
- 腸の粘膜に「白い縞模様(タイガーストライプ)」が見られることがある
- 腹水や胸水の有無を確認
(3)内視鏡検査・生検
- 小腸粘膜の生検を行い、リンパ管の拡張を確認
- IBDやリンパ腫などの鑑別診断にも重要
腸リンパ管拡張症(LPE)の治療のポイント
LPEは慢性的な疾患のため、継続的な治療と管理が必要です。
(1)食事療法(低脂肪食)
最も重要な管理方法!
- 低脂肪・高消化性(加水分解食)の食事(療法食が推奨される)
- 少量ずつ頻回給餌(腸への負担を減らす)
- 腸内環境を整えるプレバイオティクス・プロバイオティクスを活用
- 例:サイボミックス、ベルキュアBowなど
脂肪の摂取を抑えることで、リンパ管の負担を軽減し、症状をコントロールしやすくなります。
(2)薬物療法
- ステロイド(プレドニゾロン)
- 併発するIBDの治療に有効
- 免疫抑制剤(シクロスポリンなど)
- 抗生物質(メトロニダゾール)
- 利尿剤(腹水・胸水が多い場合)
(3)ビタミン・ミネラル補充
- ビタミンB12(コバラミン)補充
- 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の補給(低脂肪食で不足しやすい)
- MCT(ココナッツオイル):リンパ管に負担をかけずにエネルギー源となる
腸リンパ管拡張症(LPE)の犬猫と暮らす際の注意点
- 低脂肪食を継続することが最も大事!
- 体重や便の状態をこまめにチェック
- 定期的に血液検査を受け、アルブミンの値をモニタリング
- ストレスを避け、腸内環境を整える工夫を
LPEは適切な管理で症状を抑えられる病気ですが、食事管理が非常に重要になります。
まとめ
•腸リンパ管拡張症(LPE)は腸のリンパ管が異常に拡張し、低タンパク血症を引き起こす病気
• 慢性的な下痢・体重減少・アルブミン低下が主な症状
• 診断には血液検査・超音波検査・内視鏡生検が重要
• 低脂肪食と腸内環境の管理が治療の基本
• 定期的なモニタリングと適切なケアで長期管理が可能!
「最近、愛犬・愛猫が痩せてきた…」「下痢が続いている…」という場合は、LPEの可能性も考えて、早めに動物病院で検査を受けましょう!
茅ヶ崎市・藤沢市エリアで消化器症状でお悩みのある方は湘南ルアナ動物病院(湘南Ruana動物病院)までお問い合わせください。
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