猫の心筋症とは?種類・病態・治療法を解説

はじめに

猫の心臓病の中でも特に多く見られるのが「心筋症」です。心筋症は心臓の筋肉に異常が生じ、血液を全身に適切に送り出せなくなる病気です。特に進行すると、重篤な心不全や血栓塞栓症(血の塊が血管を詰まらせる)を引き起こす可能性があります。本記事では、猫の心筋症の種類、病態、診断、治療法について詳しく解説します。

猫の心筋症の種類と病態

猫の心筋症にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる病態を示します。

1. 肥大型心筋症(HCM: Hypertrophic Cardiomyopathy)

最も一般的な心筋症で、心筋が厚くなり(肥大)、心臓の内部空間が狭くなることで血液の流れが悪くなります。遺伝的要因が関与していると考えられ、メインクーンやラグドールなどの品種で発症リスクが高いとされています。

主な症状

  • 呼吸困難
  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 血栓塞栓症(突然の後肢麻痺)

2. 拡張型心筋症(DCM: Dilated Cardiomyopathy)

心筋が薄くなり、心臓の収縮力が低下することで血液を適切に送り出せなくなる病気です。かつてはタウリン不足が原因とされていましたが、現在は食事により改善され、発生頻度は減少しています。

主な症状

  • 低血圧による衰弱
  • 呼吸困難
  • 食欲低下
  • 不整脈

3. 拘束型心筋症(RCM: Restrictive Cardiomyopathy)

心筋が硬くなり、心臓が十分に拡張できなくなることで血液を適切に取り込めなくなる病気です。進行すると肺水腫や胸水が発生しやすくなります。原因として、心筋の線維化や仮性腱索(異常な線維性組織)が関与している可能性があります。

主な症状

  • 呼吸困難
  • 体重減少
  • 元気消失

4. 不整脈源性右室心筋症(ARVC: Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy)

心臓の右室が影響を受け、心拍リズムが乱れる病気です。比較的稀なタイプですが、突然死を引き起こすこともあります。

主な症状

  • 不整脈
  • 突然の失神
  • 元気消失

診断方法

心筋症の診断には、以下の検査が用いられます。

  • 聴診:心雑音や不整脈の有無を確認。
  • X線検査:心臓の大きさや肺の状態を評価。
  • 心エコー(超音波検査):心筋の厚みや心臓の動きを詳しく観察。
  • 心電図(ECG):不整脈の検出。
  • 血液検査:BNP(心臓マーカー)やタウリン濃度を測定。
  • 血圧測定:高血圧の有無を確認。

治療方法

猫の心筋症の治療は、病型に応じて異なりますが、主に内科的治療(薬物療法)が行われます。

内科的治療(薬物療法)

  • β遮断薬(アテノロールなど):心拍数を抑え、心臓の負担を軽減。
  • カルシウムチャネル遮断薬(ジルチアゼムなど):心筋のリラックスを促進し、血液の流れを改善。
  • ACE阻害薬:血管を広げ、血圧を調整。
  • 抗血栓薬(アスピリン、クロピドグレル):血栓塞栓症の予防。
  • 利尿剤:肺水腫や胸水の管理。

強心薬についての注意点

犬の心臓病と違い、猫の心筋症の治療において、強心薬(ピモベンダンなど)の使用は慎重な判断が求められます。猫における強心薬の有効性に関するエビデンスが限られている事や、特に肥大型心筋症(HCM)の場合には心筋の過剰な収縮が問題となるため、強心薬の使用が逆効果になる可能性があります。

外科的治療

現在、猫の心筋症に対する外科的治療は一般的ではありませんが、一部の症例ではペースメーカーの埋め込みが検討されることもあります。

予防と管理

猫の心筋症を完全に予防することは難しいですが、以下のポイントに注意することで早期発見と進行の抑制が可能です。

  • 定期的な健康診断:特に遺伝的リスクのある猫は心エコー検査を定期的に受ける。
  • 適切な食事管理:タウリンが不足しないように栄養バランスを考慮。
  • ストレスの軽減:環境の変化を最小限に抑え、安心できる生活を提供。
  • 異変を早期に察知:呼吸数の増加や活動量の低下に注意。

まとめ

猫の心筋症は進行すると命に関わる病気ですが、適切な管理と治療により症状を抑え、生活の質を維持することが可能です。定期的な健康診断を受け、少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。

茅ヶ崎市・藤沢市エリアで犬猫の心臓病でお困りの方は湘南ルアナ動物病院(湘南Ruana動物病院)までお気軽にお尋ねください。