雌猫がかかりやすい病気とは?性差によるリスクを正しく理解しよう
猫の健康管理を考える上で、「性別による疾患リスクの違い」は見逃せないポイントです。今回は、雌猫に特有、もしくは統計的に多くみられる病気について、発症率や予防のヒントを交えてわかりやすく解説します。
雌猫に多い病気と発症率データ
1. 乳腺腫瘍(とくに未避妊の雌猫)
発症傾向と統計
- 猫の乳腺腫瘍の90%以上が雌猫。
- そのうち**85〜90%が悪性腫瘍(腺癌)**とされ、進行も早い。
- 避妊手術をしていない雌猫では、発症リスクが7倍以上に跳ね上がる。
- 6ヶ月齢までに避妊すればリスクは約91%減少すると報告されています。
2. 子宮蓄膿症(未避妊雌猫特有)
発症傾向と統計
- 避妊していない中〜高齢の雌猫で発症。
- 子宮内に膿がたまり、全身性敗血症に進行することも。
- 臨床報告では、7歳以上の未避妊雌猫の10〜25%で子宮疾患(蓄膿症含む)が認められる。
- 発情抑制薬や妊娠経験の有無もリスクに影響。
※猫に関する記載は後続の臨床観察報告(Verstegen J et al., 2008)に基づく。
3. 雌優位の自己免疫疾患(猫のSLE様疾患など)
特徴と統計
- 全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚病型自己免疫疾患など、自己免疫関連疾患は雌での発症が多いとされます。
- 猫では症例数が少ないものの、一部報告では雌猫における発症率が雄の約2倍という報告も。
4. 特発性膀胱炎(FIC: Feline Idiopathic Cystitis)
性差と症状傾向
- FIC自体は性差なく発症しますが、雄猫では閉塞を伴いやすいのに対し、雌猫では「繰り返す血尿や頻尿」として慢性化しやすい。
- 尿道閉塞のリスクは少ないが、疼痛やストレスの慢性化に注意。
雌猫に多い病気の背景:ホルモンと生殖器が関与
雌猫に特有の病気や発症傾向の背景には、以下の要素があります。
- エストロゲンの影響 → 乳腺腫瘍や自己免疫疾患のリスク上昇
- 発情周期によるホルモン変動 → 子宮疾患の誘発
- 妊娠・出産歴や避妊手術の有無が大きなリスク因子
飼い主さんへのアドバイス
● 乳腺腫瘍・子宮疾患の予防には早期避妊が効果的
- 可能であれば6ヶ月齢までの避妊手術が推奨されます。
- 乳腺腫瘍の早期発見には、月1回のしこりチェックも役立ちます。
● 自己免疫疾患では皮膚や全身症状に注目
- 顔や鼻のかさぶた、発熱、関節痛、元気消失が見られる場合は検査を。
● 繰り返す血尿や頻尿にはFICの可能性も
- 環境ストレスの低減、飲水量の確保がカギとなります。
まとめ
雌猫には、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症といった生殖関連の病気をはじめ、自己免疫疾患や特発性膀胱炎の慢性化など、性差に基づく健康リスクが存在します。
これらは、避妊手術のタイミングや日常の健康管理で予防・早期発見が可能です。
愛猫の性別や年齢に合わせた予防医療と定期健診を通して、長く健康な生活を支えていきましょう。
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