犬の歯周病はお口だけの問題じゃない!関連する全身疾患とは?
はじめに
「歯周病って歯ぐきや歯だけの病気でしょ?」
そう思っていませんか?実は、歯周病は全身のさまざまな病気と深く関係していることが、近年の研究でわかってきました。放置すると大切な愛犬の寿命を縮めることにも…。
今回は、歯周病と関連が指摘されている疾患(心臓・腎臓・口腔内腫瘍以外)についてわかりやすくご紹介します。
歯周病が影響する全身疾患とは?
1. 肝臓疾患
口の中で増殖した歯周病菌や炎症物質は、血流に乗って肝臓にも到達します。これにより、慢性的な肝臓の炎症や機能低下を引き起こす可能性があります。
特に中高齢犬では「肝酵素(ALT、ALPなど)」の上昇がみられる場合があり、歯周病の影響が無視できません。
注意ポイント
- 歯周病が重度な犬は、健康診断で肝臓の数値もチェック
- 胆泥症や慢性肝炎と診断された場合、口腔ケアも見直しを
2. 糖尿病のコントロール不良
犬の糖尿病と歯周病は「悪循環」に陥りやすい関係です。
糖尿病になると免疫力が低下し歯周病が悪化、さらに歯周病による慢性炎症がインスリンの働きを邪魔(インスリン抵抗性)して血糖コントロールを難しくします。
注意ポイント
- 糖尿病と診断された犬は必ず歯科検診を
- 血糖コントロールが安定しない場合、口腔内の炎症を疑うことも
3. 関節疾患(免疫介在性関節炎など)
歯周病の炎症によって産生されるサイトカイン(炎症物質)は、血流を通じて関節にも届くと考えられています。これにより関節の慢性的な炎症や痛みを引き起こし、関節炎や免疫介在性疾患のリスクが高まる可能性があります。
注意ポイント
- 脚をかばう、動きが鈍くなる場合、歯周病チェックも視野に
- 大型犬や高齢犬で特に注意
4. 肺疾患(慢性気管支炎・肺炎)
犬が寝ている間や飲食時に、口腔内の細菌を含む唾液を誤って肺に吸い込むと誤嚥性肺炎や慢性的な気管支炎につながることがあります。
気管支の線毛が短いシニア犬は特にリスクが高いとされています。
注意ポイント
- 咳や呼吸困難が続くときは肺とお口両方のチェックを
- 歯石の多い犬ほど誤嚥リスクが高まる
5. 抗がん剤治療中の敗血症(菌血症)リスク
重度の歯周病が進行すると、傷んだ歯ぐきから歯周病菌が血液内に侵入し、菌血症や敗血症を引き起こすこともあります。これは命にかかわる深刻な状態です。特に抗がん剤治療中では免疫力の低下を引き起こすことがあるため、現実的ではないかもしれませんが抗がん剤治療前に歯周病治療を実施しておく事が理想的です。
注意ポイント
- 歯周病の犬が発熱や元気消失した場合、敗血症の可能性も
- 手術や抜歯時の感染症予防も重要
【まとめ表】歯周病が関連する全身疾患
疾患名 | 関連理由 | 注意したい犬 |
---|---|---|
肝臓疾患 | 血流経由で肝臓炎症を助長 | 高齢犬、小型犬 |
糖尿病 | 炎症→インスリン抵抗性UP、糖尿病→免疫低下で歯周病悪化 | 肥満犬、中高齢犬 |
関節疾患 | 血流を介して関節の炎症誘発 | 大型犬、高齢犬 |
肺疾患 | 唾液誤嚥→肺炎、気管支炎の原因 | 高齢犬、ミニチュアダックス |
敗血症(菌血症) | 歯周病菌が血管内侵入 | 免疫低下状態の犬、シニア犬 |
飼い主さんができる予防法
- 毎日の歯みがき(最も効果的)
- 歯科健診・歯石除去(年1〜2回)
- 持病(糖尿病、心疾患、肝疾患など)のある犬は、特に口腔ケアを強化
- 歯みがきが難しい場合は、歯みがきシートやデンタルガムも活用
まとめ
歯周病は「お口の病気」だけでなく、「全身の病気の引き金」となる可能性がある怖い疾患です。
日頃のケアと定期健診で歯周病を防ぐことが、愛犬の健康寿命を延ばす大きなポイントになります。
気になる症状があれば、いつでも動物病院へご相談ください。