犬の流涎を「自律神経 × 臨床状況」で読み解く|よだれは危険?それとも一時的な反応?

「急によだれが出た」
「泡のような唾液を垂らしている」

このような症状を見ると、多くの飼い主様は
「中毒?」「てんかん?」「すぐ病院に行くべき?」
と不安になります。

実は、犬の流涎(よだれ)は
自律神経の働きによって一時的に起こることも多く、必ずしも重い病気とは限りません。

この記事では、
「自律神経 × その時の状況」という視点から、犬の流涎を分かりやすく解説します。

自律神経とは?(簡単に)

自律神経は、私たちや犬が意識しなくても体を調整してくれる神経です。

主に2つがあります。

  • 交感神経:緊張・興奮・ストレス時に働く
  • 副交感神経:リラックス・休息・消化の時に働く

唾液の分泌も、この自律神経によってコントロールされています。

流涎の「性状」がヒントになります

サラサラしたよだれの場合

  • 透明
  • 水っぽい
  • 口から垂れるように出る

副交感神経が強く働いている状態
胃のムカつき(悪心)迷走神経反射が原因のことが多い

ネバネバ・泡状のよだれの場合

  • 粘り気がある
  • 泡を吹いたように見える

交感神経が優位な状態
→ 強い緊張・恐怖・ストレスが関与していることが多い

よくある臨床状況別に見る「犬の流涎」

① 嘔吐はないけど、急にサラサラなよだれが出た

これは最も多いパターンです。

  • 胃の不快感
  • 空腹時の胆汁逆流
  • 軽い胃炎
  • 食べ慣れない物を食べた

などがきっかけで、
「吐くほどではない悪心」として流涎だけが出ることがあります。

✔ 数分〜30分ほどで自然に治まる
✔ その後元気・食欲がある

この場合、多くは緊急性は高くありません

② 病院・雷・車移動などでネバネバなよだれが出る

この場合はストレス性流涎が疑われます。

  • 交感神経が一気に緊張
  • 唾液は少量でも粘稠になり、泡立って見える

✔ パンティング
✔ 震え
✔ 落ち着きのなさ

を伴うこともあります。

③ サラサラよだれ+落ち着きがない

一見消化器の不快感(悪心)にも見えますが、長期的な自律神経の乱れが背景にあることも少なくありません。

ストレス
→ 自律神経が乱れる
→ 反射的に副交感神経が働く
→ サラサラな流涎が出る

という流れです。

「自律神経の乱れ」で流涎が起こる仕組み

慢性的なストレスや体調不良が続くと、
自律神経の切り替えがうまくいかなくなることがあります。

  • 交感神経が緊張しやすい
  • ちょっとした刺激で副交感神経が過剰に反応
  • 結果として、理由がはっきりしない流涎が起こる

これを自律神経のバランスの乱れ=自律神経失調と表現します。
長期的なストレスに伴う自律神経の乱れでは涎以外にも、「瞳孔の散大」や「瞬膜の突出」や「ドライアイ」といった見た目の変化と、下痢・嘔吐・尿失禁などの症状がみられる事があります。

④ 何度も繰り返す・他の症状を伴う場合

以下のような場合は注意が必要です。

  • 繰り返し流涎が起こる
  • 意識がぼんやりする
  • ふらつく
  • 食欲低下が続く
  • 体重減少

▶︎ 消化器疾患、口腔疾患、神経疾患などの可能性があります。

ここまでのまとめ

以下の表は、唾液の性状 × 考えられる背景を整理したものです。

唾液の性状特徴考えられる主な要因臨床でのヒント
サラサラ(水様性)量が多い、口から垂れる副交感神経優位、悪心、痛み、恐怖、酔い一過性であればストレスや胃腸刺激の可能性
ネバネバ(粘稠性)糸を引く、泡状交感神経緊張、脱水、慢性ストレス持続する場合は全身状態の評価が重要
泡状の流涎白い泡が口周囲に付着悪心、口腔違和感、中枢性刺激中毒や神経疾患の除外が必要なことも
片側性の流涎片側のみ濡れる口腔疾患、神経障害歯科・顔面神経の評価を優先

こんな流涎は早めに受診を

以下に当てはまる場合は、動物病院へご相談ください。

  • 流涎+吐きたくても吐けない素ぶり:胃拡張・捻転症候群の可能性

※中〜大型犬・ミニチュアダックスフンドでは特に注意

  • ネバネバな涎止まらないパンティング高温条件:熱中症や痙攣発作の前兆のリスク
  • 口を触ると痛がる:口腔内疾患(歯周病や口腔内腫瘍など)の可能性
  • 嘔吐・下痢・元気消失を伴う:消化器疾患や自律神経失調など様々な要因を考慮
  • 同じ症状を何度も繰り返す

まとめ|よだれは「体からのサイン」

犬の流涎は、
「危険な病気のサイン」になることもあれば、
「一時的な自律神経反応」であることも多い症状
です。

大切なのは、

  • よだれの性状(サラサラ or ネバネバ)
  • 起こった状況(ストレス?食後?空腹?)
  • その後の様子

落ち着いて観察することです。

「様子見でいいのか」「受診すべきか迷う」
そんな時は、ぜひ動物病院にご相談ください。

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