【第4回】犬猫の誤食・中毒について

はじめに

こんにちは。湘南Ruana動物病院です。

愛犬・愛猫が「お家の観葉植物を食べてしまった」「散歩中に花壇の花を食べてしまった」そんな経験はございませんでしょうか?

犬猫の誤食とは、ペットが本来食べてはいけない(と思われる物)を誤って口にしてしまう事を指します。これは日常生活の中でよく起こる問題で、家の中にある(もしくは外にある)様々な物(人の食べ物、薬品、日用品、植物など)がペットにとって有害である場合があります。

シリーズ第4回目となります今回は「公園にありそうな植物と観葉植物」をテーマに誤食してしまった際の症状や処置などを解説していきます。尚、本シリーズに記載する中毒量はあくまで参考値となりますので、記載量を下回る摂取量であっても症状を示す場合があります。必ず動物病院まで確認するようお願いします。

公園で見かける事がある有毒植物

キョウチクトウ

有毒部位

葉、花、茎、根などの全ての部位。特に樹皮、葉

特徴

キョウチクトウは常緑低木で2〜4m程度に成長します。枝は細長く、葉は細長い楕円形で先端は鋭く尖っています。花は直径3〜5cmで5つに裂けてよじれたプロペラ状に咲きます。 小花が数輪~10数輪が集まって咲く事も特徴的です。比較的温暖な気候の地域で広く栽培されていますが、公園や庭、街路樹としても利用されています。

中毒

キョウチクトウは犬や猫にとって非常に有毒な植物です。
キョウチクトウにはオレアンドリンなどの強心配糖体と呼ばれる心毒性を引き起こす物質が含まれております。この強心配糖体は心筋細胞膜のNa-Kポンプを阻害し、心筋収縮性の増加・房室結節への伝導速度の減少などの影響を出します。

症状は悪心・嘔吐などの消化器症状に始まり、徐脈性もしくは頻脈性の不整脈、電解質異常(高K血症、低Na血症)、散瞳などが認められ、重症例では痙攣発作が認められるようになります。

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スズラン

有毒部位

葉、花、茎、根などの全ての部位。熟して赤くなった果実も有毒

特徴

スズランは15〜20cmほどの小柄な草丈で、「鈴」のような形でうつむくように下を向いて咲く花が特徴的です。

中毒

スズランは5月の誕生花で、芳香が強く、清楚で美しい雰囲気があり、プレゼントとしても人気の花です。しかしスズランにはコンバラトキシンやコンバロシドなどの有毒物質が含まれており、犬や猫が誤食すると中毒を引き起こす可能性があります。
花瓶に入っている水を飲むだけでも中毒症状を引き起こす可能性があります。
症状は、悪心・嘔吐などの消化器症状に始まり、心拍の異常などが認められ、重症例では痙攣発作が認められるようになります。

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アジサイ

有毒部位

葉、花、茎、根などの全ての部位。特に蕾の毒性が強い

特徴

日本原産の落葉低木で高さ1~1.5メートルの株立ちになります。 葉は対生し、広楕円形で先はとがり、縁に三角状の鋭い鋸歯 があります。花びらのように見えるのは、本来花びらを支える「がく」が変化したものという特徴的な花です。

あじさいは、土の酸性度によって花の色が変わる性質があるようです。 酸性の土では青色系統に、中世~弱アルカリ性の土では赤・ピンク色系統になるようです。

中毒

アジサイにはグリコシドという毒性成分が含まれており、摂取すると体内でシアン化水素(青酸)を生成することがあります。
症状は初期に消化器毒性(嘔吐、下痢、流涎、食欲不振)が認められ、重篤な場合は呼吸困難や昏睡を引き起こします。

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ヒガンバナ

有毒部位

葉、花、茎、根などの全ての部位。特に球根の毒性が強い

特徴

花は放射状に咲き、細長い花びらが6枚あり、糸のように長く突き出た雄蕊が特徴的です。

ヒガンバナは9月のお彼岸の時期に咲くため、「彼岸花」という名前がついたそうです。

中毒

ヒガンバナには「リコリン」と呼ばれるアルカロイドが含まれており、これが中毒の原因物質です。特に球根は最も毒性が強く、摂取すると中枢神経や消化器系に影響を与え、中毒症状を引き起こします。
症状は30分以内に現れることがあり、初期症状は悪心や下痢、唾液の過剰分泌などが挙げられます。
進行すると、痙攣発作や呼吸困難、心拍の変動が見られ、重症の場合は死に至ます。

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ユリ科植物(ユリ、ヒヤシンス、チューリップなど)


有毒部位

葉、花、茎、根などの全ての部位

特徴

ユリやチューリップなど、地下に球根・鱗茎が発達するものが多いとされています。またその花は外片3枚、内片3枚の計6枚の花びら状の被片を持ち、6本の雄蕊、子房上位などの特徴もあります。

中毒

猫に重篤な腎障害を引き起こします。犬や他の動物種で同様の中毒症状が引き起こされるかは不明とされています。
摂取から1−3時間ほどで、嘔吐、流涎、食欲不振が見られはじめ、12〜30時間で脱水・多尿が顕著となり、1〜2日で急性腎障害(Stage 4)に至るとされています。
重篤の場合、摂取から3-7日で死に至る事があります。

Danger

猫の場合、少量の葉(2〜3枚)や花の一部を誤食しただけでも致命的となります。

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観葉植物

シュウ酸カルシウム中毒

中毒

ポトス・モンステラ・ディフェンバキア・カラジウムなどの観葉植物にはシュウ酸カルシウムが含まれています。シュウ酸カルシウム結晶は犬や猫に対して有毒であり、口腔粘膜に激しい炎症を起こし、痛み・よだれ・嚥下障害などの口腔内の障害と、嘔吐や下痢などの胃腸障害を引き起こします。

シュウ酸カルシウム結晶を含む観葉植物はサトイモの仲間(サトイモ目やサトイモ科)が多いです。花が咲いた時に仏炎苞になる植物の多くは犬猫にとって良くないものが多いです。

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サポニン中毒

中毒

これらの植物は全て、程度の違いがありますが、サポニンという成分を含んでおり、犬や猫にとっては有毒です。

サポニンという成分により、嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こします。

シクラメンは根っこに、アイビーとサンスベリアは葉っぱ、ドラセナとユッカは全草にサポニンが多く含まれています。

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ポインセチア

中毒

クリスマスの代名詞であるポインセチアも実は犬猫が誤食すると中毒を引き起こす可能性があります。ポインセチア中の乳液成分(茎や葉っぱが折れた時に滲み出る液)にはホルボールエステル類と呼ばれる成分が含まれており、これにより下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす可能性があります。

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中毒を引き起こしづらい観葉植物

ガジュマル・シュロチク・パキラ・アレカヤシなどの観葉植物は中毒成分は含まず、誤食しても安全とされています。

しかし、安全とされる植物でも、誤食が頻繁に続くと消化不良を引き起こすことがあるため、できるだけ植物をかじらせないようにすることが理想です。また、個体差によりアレルギー反応が出るくとも稀にあるため、初めて植物を取り入れる際には慎重に観察してください。

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有毒植物を誤食してしまったら…

有毒植物を誤食してしまった場合には、催吐処置や胃洗浄や吸着剤投与などの処置が必要となります。症状が現れる前に動物病院へ受診しましょう。

まとめ

今回は「有害物」を誤食してしまった場合について解説させて頂きました。ここにある物以外にも中毒症状を引き起こす物は存在します。

藤沢、茅ヶ崎エリアで、愛犬・愛猫が普段食べ慣れないものを誤って食ベてしてしまった際には、湘南Ruana動物病院までご連絡ください。

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