雄猫が何回もトイレに行くけど尿が出ない:尿道閉塞と膀胱炎について

愛猫が何回もトイレに行くのに尿が出ない、またはわずかな尿しか出ない場合、これは非常に深刻な健康問題の兆候かもしれません。特に雄猫では、尿道閉塞や膀胱炎のリスクが高く、状況によっては早期の対応が必要です。本記事では、尿道閉塞と膀胱炎について詳しく解説していきます。

尿道閉塞とは?

尿道閉塞とは、尿道が何らかの原因で塞がってしまい、尿が膀胱から外に排出されなくなる状態です。特に雄猫は、尿道が細長く、小さい結石などができると、閉塞を引き起こすことが多いです。また、炎症により細胞成分などが脱落することで、これが閉塞を引き起こす事もあります。尿道閉塞を引き起こすと、尿を出したくても「物理的に排出ができない状態」になるので、「何回もトイレに行くのに尿が出ない」状態となります。また、尿が出ない事に違和感があるために「陰部をしきりに舐める」といった行動も見られるようになります。尿道閉塞の状態を放置すると、膀胱に尿が過剰に溜まり、膀胱の破裂や急性腎不全を引き起こし命に関わる状態となるため、なるべく早急な緊急処置が必要になります。

雌猫は尿道が短いため、雄猫と比べると結石などによる尿道閉塞は起こしづらいです。

膀胱炎とは?

膀胱炎は、文字通り膀胱粘膜の炎症です。細菌感染やストレスや結石などが原因で発生します。炎症刺激により、膀胱が空になっても「残尿感」を伴うため「何回もトイレに行くが尿が出ない」状態となります。また、血尿や過剰なグルーミングといった症状が見られることもあります。膀胱炎自体は、尿道閉塞のような早急に対応しないと命に関わる危険な状態になることはまずありえませんが、長期に渡り放置した場合には腎盂腎炎など重篤な状態に至るケースもありますので治療は必要です。

症状を見逃さないために

上記の通り、尿道閉塞と膀胱炎は非常に類似した症状が見られます。以下のような症状が見られた場合、すぐに動物病院に相談しましょう。

  • 頻繁にトイレに行く:通常よりも頻繁にトイレに行くが、尿が出ないまたは少ない。
  • 痛がる様子:排尿時に鳴いたり、体を振るわせたりする。
  • 過剰なグルーミング:特に陰部や付近をしきりに舐める。
  • 食欲不振:食べる量が減ったり、全く食べなくなったりする。
  • 嘔吐:急に嘔吐を繰り返すこともあります。

頻繁にトイレに行く際のポイントとしては、「1日の内で必ず1回はしっかりとオシッコが出ているか?」を確認してください。朝から晩まで尿が出ていない場合には尿道閉塞の可能性が高くなります。

尿道閉塞と膀胱炎の診断

雄猫で「頻繁にトイレに行くが尿が出ない」という主訴での来院があった場合、まずはトリアージ(緊急度のチェック)からおこないます。膀胱炎では緊急状態になる事は考えにくいですが、時間経過のある尿道閉塞であった場合には緊急対応が必要だからです。腹部触診も重要な情報を与えてくれます。時間経過のある尿道閉塞の場合、硬いソフトボール大の膀胱が触知されます。もちろん、閉塞したての時には少量の蓄尿のケースもあり得るので、尿道閉塞は尿道カテーテルの挿入をもって判断します。その他、以下の検査も行います。

▼超音波検査

膀胱内の浮遊物や結石の有無、粘膜の状態(肥厚、結節、層構造など)を確認します。尿道閉塞の場合には腎臓〜尿管(腎盂や尿管拡張)にかけても注目します。尿道閉塞により膀胱破裂を伴っていると腹水が認められるのでその有無も確認します。

▼血液検査

膀胱炎の場合、診断における特異的な検査とはなりませんが、腎盂腎炎にまで至っている場合には有用な情報を与えてくれます。また、尿道閉塞の際には急性腎障害に至っていないかどうかの判断や、致死的な状況か(高K血症)どうかの判断に必要です。

▼心電図

尿道閉塞の場合、急性腎障害からの重篤な高K血症に至っている場合もあります。高K血症の場合、心筋細胞の再分極異常や上室の興奮抑制などにより、致死的な徐脈性不整脈になることがあります。

治療方法

尿道閉塞の場合

尿道閉塞が確認された場合、尿道にカテーテルを挿入して閉塞を解除します。カテーテル挿入で閉塞解除が困難な場合には、応急的に膀胱穿刺(直接膀胱に針を刺す)により尿を抜去します。トリアージレベルが高く高K血症に至っている症例においては、こちらの治療を優先的に行います。急性腎障害の症例においては、閉塞解除後にそのままカテーテルを留置し、十分な輸液を行い腎機能が戻るまで持続的な排尿を促します。

膀胱炎の場合

膀胱炎の場合、抗生物質や抗炎症薬が処方されることが一般的です。また、ストレスを軽減するための環境改善や、飲水量を増やすための工夫も重要です。食事を見直すことで、尿路結石のリスクを減少させることができます。

リスク因子

尿道閉塞と膀胱炎を引き起こすリスク因子としては共通するものがいくつか挙げられます。

肥満

肥満猫では下腹部や腹腔に脂肪が溜まります。これが内臓に圧力をかけ、尿道や膀胱に対しても影響を及ぼします。特に、肥満猫は尿道が狭くなりがちで、尿の排出が不完全になることがあります。このような状態が続くと、尿の流れが滞り、尿道に結石ができやすくなり、尿道閉塞も起こりやすくなります。また過剰な体脂肪が尿の成分や尿のpHに影響を与えることがあり、それが結石形成を助長することがあります。さらに、肥満により、活動量が減ると水分摂取量も減り、排尿頻度が減ります。これにより濃縮された尿は結晶(結石のもと)が形成されやすい状態になります。

早期の去勢手術

保護猫などで去勢を非常に早期(例えば3ヶ月齢くらい)に行った場合、ホルモンバランスが変化し、性ホルモンによる影響が十分に現れないため、陰茎の成長に影響を与える可能性があるという報告があります。特に、性成熟に関わるホルモンが不足すると、陰茎や尿道が未発達のままとなり、将来的に尿道閉塞を引き起こすリスクが増すことが考えられます。雄猫の性成熟は平均的には8ヶ月前後と言われていますが、性ホルモンの影響が強くなる前に去勢をすることで行動上の問題を未然に防ぐという点から、多くの動物病院では6-7ヶ月前後に去勢を行う事を推奨しています。

予防策

尿道閉塞や膀胱炎は予防が可能です。以下のポイントを参考にして、愛猫の健康を守りましょう。

  1. 十分な水分補給:常に新鮮な水を用意し、飲水を促す工夫をしましょう。猫用の給水器やフードに水を加えることも効果的です。
  2. バランスの取れた食事:尿路の健康を維持するためには、質の良いキャットフードを選ぶことが重要です。尿路結石を予防するための専用フードもあります。
  3. ストレス管理:猫は環境の変化に敏感です。快適で安定した生活環境を提供し、ストレスを軽減するための工夫をしましょう。
  4. 定期的な健康診断:獣医師による定期的な健康診断を受けることで、早期に問題を発見することができます。

まとめ

雄猫が何回もトイレに行くのに尿が出ないという症状は、尿道閉塞や膀胱炎のサインです。緊急度は異なるものの、これらの病気はいずれにおいても治療が必要です。少しでも異変を感じたらすぐに動物病院に相談することが大切です。

藤沢・茅ヶ崎エリアで、猫ちゃんの頻尿でお悩みの時は湘南Ruana動物病院までご相談ください。

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