【第1回】犬猫の誤食・中毒について
はじめに
こんにちは。湘南Ruana動物病院です。
愛犬・愛猫が「目を離した瞬間にテーブルの上のご飯を食べてしまった!」「ねだってくるから、ついつい人の食べ物を与えてしまった」そんな経験はございませんでしょうか?
犬猫の誤食とは、ペットが本来食べてはいけない(と思われる物)を誤って口にしてしまう事を指します。これは日常生活の中でよく起こる問題で、家の中にある(もしくは外にある)様々な物(人の食べ物、薬品、日用品、植物など)がペットにとって有害である場合があります。
シリーズ第1回目となります今回は「人の食べ物やおやつ」をテーマに誤食してしまった際の症状や処置などを解説していきます。尚、本シリーズに記載する中毒量はあくまで参考値となりますので、記載量を下回る摂取量であっても症状を示す場合があります。必ず動物病院まで確認するようお願いします。
チョコレート
緊急度レベル:1〜5
症状
カカオに含まれるメチルキサチン(カフェイン+テオブロミン)による自律神経作用に伴い
- 頻脈・高血圧・不整脈などの心血管系症状
- 痙攣発作・ふらつき・意識障害などの神経症状
を引き起こします。メチルキサチン濃度≒カカオ含有量といえばわかりやすいかもしれません。このメチルキサチン濃度に依存して中毒症状を引き起こすリスクが変わるため、中毒を起こすかどうかはチョコレートの種類によって変わります。
チョコレートの油脂による胃腸障害(胃腸炎、膵炎)なども引き起こされる可能性もあるので、カカオ含有量に関わらず誤食はダメです!
中毒量
緊急度 | 製品 | メチルキサチン含有量 | 体重4kgあたりの中毒量 |
レベル1 | ホワイトチョコ | 0.039mg/g | 12枚(板チョコ40g/枚) |
レベル3 | ミルクチョコ | 1.67mg/g | 1枚(板チョコ50g/枚) |
レベル4 | ダークチョコ | 5.2mg/g | 1/4枚(板チョコ50g/枚) |
レベル5 | ココアパウダー | 28.47mg/g | 約3g |
上記はおおよその目安ですが、ココアパウダーは同量のミルクチョコの約17倍ものメチルキサチンを含んでいます。
処置
チョコレートを誤食した際は、「どんなチョコレートを誤食したか」がわかる物もご持参頂き、なるべく早めに動物病院へ受診してください。
誤食して経過時間が短い場合には「催吐処置」を実施します。ココアパウダーやダークチョコなどカカオ含有量が多いチョコレートの誤食の場合には「胃洗浄」も検討します。
その他として、吸収量を減らすための吸着剤(活性炭など)の投与や補液処置も実施します。
ネギ類(ねぎ、玉ねぎ、にら、ニンニクなど)
緊急度レベル:3
症状
ネギ類に含まれる、アリルプロピルジスルフィドとグルタチオンには酸化作用があり、人では血液をサラサラにしてくれます。しかし、犬・猫においてはその作用が強すぎて赤血球を壊します。
特に猫の方が犬よりも感受性が高いため、少量でも中毒を引き起こす可能性があります。
貧血症状は一般的には摂取後2日以降に認められます。
赤血球が壊れる病態なので、症状としては、活動性の低下(貧血)、粘膜色が薄くなる(貧血)、尿の色が茶褐色〜赤色となる(溶血尿)などが認められます。
中毒量
犬猫の中毒量は以下の通りとなります。
動物種 | 中毒量 |
犬 | 5〜30g/kg |
猫 | 5g/kg |
玉ねぎ大250g/個、玉ねぎ少170g/個
犬猫ともに、体重4kgに対して玉ねぎ大1/12個、小サイズ1/8個部分の誤食で中毒症状が出る可能性があります。
また、アリルプロピルジスルフィドは加熱しても残存するため、「玉ねぎエキス」が抽出されたご飯の誤食でも中毒を引き起こす可能性があります。
処置
誤食して経過時間が短い場合には「催吐処置」を実施します。猫ちゃんは催吐処置の薬への反応が犬よりも悪い事もあり、「胃洗浄」が適応となることもあります。また吸収量を減らすための吸着剤(活性炭など)の投与や補液処置も実施します。誤食してから時間経過が長い場合は、血液検査などでモニターしながら治療にあたります。重度の貧血の場合には輸血も検討します。
キシリトール
緊急度レベル:5
症状
犬がキシリトールを誤食すると、インスリンが大量放出され低血糖に至ります。
また、肝細胞壊死も引き起こし、肝不全および血液凝固異常(出血傾向)も引き起こします。
摂取後30分〜60分で低血糖となり、12〜24時間以内に肝酵素が上昇し始めます。
中毒量
症状 | 中毒量 | 発症までの時間 |
低血糖 | 0.1g/kg〜 | 30分〜1時間 |
急性肝障害 | 0.5g/kg〜 | 12時間〜24時間 |
キシリトールガムは1粒あたり0.3〜1.3gのキシリトールを含有します。
3kgの子だと1粒食べただけで中毒症状を引き起こす可能性があります。
処置
症状が出るかは個体差がありますが、早急な対応が必要です。
来院時時点で症状が認められない場合であれば、催吐処置や胃洗浄によりキシリトールをある程度除去する事ができますが、キシリトールの吸収率は極めて高いため、症状が現れている場合には催吐処置や胃洗浄は有効ではありません。
この場合は症状に対する支持療法を直ちに開始し、キシリトール中毒が抜けるまで治療とモニタリングを行う必要があります。
犬のブドウ中毒
緊急度レベル:1〜5
症状
犬がぶどうを食べると中毒症状を引き起こすことがあります。しかし、その原因に関しては完全には解明されていません。
大量に摂取しても何も症状を示さない場合もありますが、数粒程度の摂取でも中毒に陥る場合があります。ぶどうやレーズンには「犬にとって有害な未知の毒素」が含まれている可能性があると考えられています。この毒素が犬の腎臓にダメージを与えます。
- 嘔吐・下痢などの消化器症状
- 24-48時間以降に急性腎障害
レーズンの方がぶどうよりも少量で中毒となる傾向がある事から、加工方法(中毒物の濃縮)や特定の品種や栽培方法によっても影響があるのではと考えられています。
中毒量
種類 | 中毒量 | 体重4kgでの摂取量 |
巨峰 | 19.6〜148.4g/kg | 8〜10粒 |
デラウェア | 19.6〜148.4g/kg | 40〜50粒 |
レーズン | 2.8〜36.4g/kg | 12粒 |
処置
ぶどうの誤食については中毒になるかどうか個体差がありますが、一概にして誤食直後であれば催吐処置や点滴、毒素吸着剤投与などの治療が必要になります。
まとめ
今回は「人の食べ物やおやつ」を誤食してしまった場合について解説させて頂きました。ここにある物以外にも中毒症状を引き起こす食べ物は存在します。
藤沢、茅ヶ崎エリアで、愛犬・愛猫が普段食べ慣れないものを誤って食ベてしてしまった際には、湘南Ruana動物病院までご連絡ください。