【第2回】犬猫の誤食・中毒について

はじめに

こんにちは。湘南Ruana動物病院です。

愛犬・愛猫が「ついうっかり落としてしまった人の薬を飲んでしまった」「部屋を片付けていた時に何かを口にしてしまってた」そんな経験はございませんでしょうか?

犬猫の誤食とは、ペットが本来食べてはいけない(と思われる物)を誤って口にしてしまう事を指します。これは日常生活の中でよく起こる問題で、家の中にある(もしくは外にある)様々な物(人の食べ物、薬品、日用品、植物など)がペットにとって有害である場合があります。

シリーズ第2回目となります今回は「人薬や生活用品」をテーマに誤食してしまった際の症状や処置などを解説していきます。尚、本シリーズに記載する中毒量はあくまで参考値となりますので、記載量を下回る摂取量であっても症状を示す場合があります。必ず動物病院まで確認するようお願いします。

風邪薬

緊急度レベル:3〜5

アセトアミノフェン

症状

アセトアミノフェンは総合風邪薬などで含まれる一般的な解熱鎮痛薬です。日本ではパラセタモールとも呼ばれ、風邪やインフルエンザ、頭痛、月経痛など様々な軽度〜中等度の痛みや発熱を緩和するために使用されています。

これを犬猫が誤食した場合、軽症であれば胃腸障害が見られます。重症の場合は犬で急性肝障害が、猫で貧血(メトヘモグロビン血症)が認められます。

中毒量
動物種中毒量
100〜600mg/kg
50〜100mg/kg

犬よりも猫の方が感受性が高く、少量の誤食でも中毒症状が出る可能性があります。また、吸収するまで1時間以内と早い薬剤であるため、早急な対応が必要となります。

処置

アセトアミノフェンを誤食してすぐの場合には、催吐処置・吸着剤の投与・補液などの処置を行います。摂取量が多い場合には胃洗浄なども検討されます。また、アセトアミノフェンに対しては、解毒・拮抗薬としてN-アセチルシステインという薬が存在するので、こちらの投与も行います。

イブプロフェン

症状

イブプロフェンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種で、痛みを和らげる鎮痛作用や炎症を抑える抗炎症作用、そして発熱を抑える解熱作用があります。動物薬にもNSAIDsはありますが、犬猫とイブプロフェンは相性が悪く、深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。

軽度であれば胃腸障害が、重度であれば大量の消化管出血(吐血や黒色下痢)や急性腎障害、痙攣発作や昏睡などの重篤な神経症状を示し、最悪の場合には致死的な症状を示します。

中毒量
動物種中毒量
25〜600mg/kg
12.5〜300mg/kg

アセトアミノフェンと同様に犬よりも猫の方が感受性が高く、少量の誤食でも中毒を引き起こす可能性があります。

処置

一般的な中毒治療(催吐処置や胃洗浄や点滴など)に加えて、脂肪乳剤(中毒物を吸着させる静脈点滴剤)を用いた治療も行う場合があります。

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睡眠導入剤

緊急度レベル:3〜5

症状

一般的に人薬で処方される睡眠導入剤として、ベンゾジアゼピン系非ベンゾジアゼピン系があり、犬猫がこれを誤食すると、鎮静または興奮などの神経症状が認められます。また、肝障害などの副作用を示す場合もあります。

中毒量

薬の種類によりますが、不明な場合もあります。

薬の形状によっては、胃内での溶解速度が計算されたコーティングになっており、同じ成分の薬でも中毒症状が発現するまでの時間が異なる事があります。

処置


摂取してしまった場合には早急な催吐処置や点滴、毒素吸着剤投与などの治療が必要です。また、来院時にはすでに深い鎮静・呼吸抑制などの重篤な症状を示す場合にはフルマニゼルという拮抗薬を使った解毒処置を行う場合もあります。

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乾電池

緊急度レベル:4

症状

電池のような消化できない異物を飲み込むこと自体が危険ですが、中でもアルカリ電池に含まれるアルカリは中毒を引き起こす原因となります。アルカリ成分が漏出すると、組織や細胞を壊死させ、壊死領域を液化させてしまいます。例えばアルカリ電池を犬がかじって成分が漏れ出た場合、口の粘膜への刺激が顕著に現れます。口の中は爛れてしまい、口腔内潰瘍や火傷になったりする場合もあります。丸ごと誤食した場合、胃の中では消化液により、徐々に電池が溶け出し、アルカリ成分が漏出することもあります。その場合は胃潰瘍や胃穿孔(胃に穴が開く)こともあります。

処置

できれば、早期の回収が必要です。電池の存在部位を特定するために、レントゲン検査を行います。誤食した直後に胃内であれば、大きさなどをみて催吐処置や内視鏡検査でできるだけ早く取り除く必要があります。長時間経過していても胃内にあるようであれば、内視鏡や胃切開などで摘出します。腸管にある場合は糞便と一緒に出る可能性もありますが、状態次第で腸切開などが必要と判断します。

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保冷剤

危険度レベル:1または5

保冷剤に含まれるエチレングリコールという成分が犬猫において危険な中毒物質となります。エチレングリコールは保冷剤の不凍液(カチカチに凍らせない)として使われていました。しかし、小さい子供が保冷剤の中身を誤食してしまって問題になったケースもあったことから、1990年代頃にはエチレングリコールを使用した保冷剤はほとんど市場から姿を消しています。

現在は、毒性のない食品添加物としても認められているプロポレングリコールという物質などが不凍液として使用されています。

昔から使っている保冷剤には、エチレングリコールが含まれている可能性もあるので、ここではエチレングリコールの保冷剤を誤食してしまった場合を紹介します。

症状

保冷剤や不凍液に含まれる可能性のあるエチレングリコール中毒は、誤食量や誤食してからの経過時間に大きく左右されて現れます。誤食から2〜3時間で血液中に到達し誤食から4時間で中毒症状が現れ始めます。

  • 数時間以内の症状:嘔吐、多飲多尿、痙攣発作、意識障害
  • 12〜24時間での症状:頻脈・不整脈、頻呼吸、低カルシウム血症

犬では1日〜3日で、猫では2時間〜24時間以内で急性腎障害を発症します。

中毒量

犬での致死量 6.6ml/kg

治療

エチレングリコールの吸収は比較的に速く、誤食直後であれば催吐処置や胃洗浄が有効となります。誤食から数時間が経過している場合は、直ちにに輸液やエチレングリコールの代謝阻害を目的としたエタノールの投与が必要となります。

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まとめ

今回は「人薬や生活用品」を誤食してしまった場合について解説させて頂きました。ここにある物以外にも中毒症状を引き起こす物は存在します。

藤沢、茅ヶ崎エリアで、愛犬・愛猫が普段食べ慣れないものを誤って食ベてしてしまった際には、湘南Ruana動物病院までご連絡ください。

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