藤沢市で発生したレプトスピラ感染症について
2025年1月末に藤沢市内のワンちゃんがレプトスピラ感染症に罹患したという報告がありました。場所は藤が岡・柄沢エリアとの事です。

神奈川県での発生状況としては、2024年に横浜市内で1件、2021年に逗子市内で1件、2020年に川崎市で2件、2019年に相模原市で1件の報告がされております。
レプトスピラ症について

レプトスピラ症はスピロヘータの一種であるLeptospira属細菌のうち、いくつかの病原性血清群によって引き起こされる感染症です。レプトスピラ症は、多くの家畜や野生動物に発生する人獣共通感染症であり、人では不顕性感染(無症状の感染)となることもあれば、重篤な疾患を引き起こすこともあります。
犬でも病原性血清型によっては重篤な症状となる事があり、腎臓・肝臓、肺、髄膜への障害が起こり、最終的には多臓器不全に陥り死亡してしまうことがある致死率の高い感染症です。
感染経路

Leptospira属細菌は、保菌動物(一般的にはネズミ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの哺乳類)の腎臓に感染して、長年にわたり尿からレプトスピラを排出します。よって、汚染された尿との直接的な接触によって感染が起こります。また、Leptospira属細菌は淡水源(池や湖など)では数週間から数ヶ月生き延びる事ができるため、尿に汚染された水源地(尿に汚染された湖や池や土壌など)の接触でも感染が起こる可能性があります。感染経路は汚染された水や土壌の経口感染(口からの感染)や粘膜感染、創傷部からの感染が確認されています。
予防接種を受ける上での注意
一部のレプトスピラ症はワクチン接種によって予防する事ができます。関東圏内で一般的に使用されている6種ワクチンにはレプトスピラは含まれてませんが、7種~10種のワクチンにはレプトスピラが含まれております。注意点としては、病原性が確認されているレプトスピラの血清群は少なくとも24はあるとされており、7種以上のワクチン接種をおこなったからといって確実にレプトスピラ症を予防する事ができる訳ではない事です。
日本国内で確認されている犬のレプトスピラ症の血清群
・Canicola(カニコーラ)
・Icterohaemorrhagiae(イクテロヘモラジー)
・Pomona(ポモナ)
・Hebdomadis(ヘブドマディス)
・Autumnalis(オータムナリス)
・Australis(オーストラリス)
特にCanicola(カニコーラ)とIcterohaemorrhagiae(イクテロヘモラジー)は日本の犬でよく報告されている血清群です。また、近年はPomona(ポモナ)やHebdomadis(ヘブドマディス)などの血清群も確認されており、地域によって流行する血清群が異なる可能性があります。
レプトスピラワクチンの追加接種をご検討の方へ

当院では、通常の6種ワクチンに加え、10種ワクチン、そしてレプトスピラワクチン(カニコーラ、イクテロへモラジー)を用意しております。
①1年以内に6種ワクチンまたはワクチン抗体価検査を実施された方
レプトスピラワクチンをご用意致します。レプトスピラワクチン接種が初めての方がほとんどかと思われますので、接種する際は午前中の来院をお願いします。また接種後は安静を保ち、入浴またはシャンプー等は避けて頂くようお願いします。
②1年以内にワクチン接種をされていない方
10種ワクチンの接種または、抗体価検査+レプトスピラワクチンの接種をさせて頂きます。①と同様に、ワクチン接種は体調の整っているコンディションの午前中にお越しください。
レプトスピラ感染の対策
神奈川県における犬の登録頭数は約43万頭です(令和5年)。2012年~2022年における神奈川県内の犬におけるレプトスピラ発生状況では12例の届出がされております。決して多くはない状況ですが、地元エリアでの発生が確認されたとの報告があれば、不安になられる方も多いかと思います。
レプトスピラ感染症の原因菌はネズミが保有しており、尿を介して排泄されます。
レプトスピラは乾燥には弱いですが、淡水中では数週間から数ヶ月生き延びる事ができるため、川や池、水たまりなどの水場には気をつけましょう。また、豪雨後や淡水の洪水の後にアウトブレイクが報告されております。雨上がりのお散歩では、濡れた木やぬかるみに足を踏み入れたり、ニオイを嗅がせたりしないよう心がけましょう。
藤沢、茅ヶ崎エリアでレプトスピラ感染症やワクチン接種についてご不安や詳しく聞きたい事などがある方は湘南Ruana動物病院までお問い合わせください。
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