【犬・猫の下痢が治らない】原因はひとつじゃない?見逃したくない病気と受診の目安

「下痢がずっと治らない…」と感じたら

  • 下痢止め・整腸剤を飲んでも良くならない
  • フードを変えても改善しない
  • 良くなったり悪くなったりを繰り返す

このような「治らない下痢」は、動物病院でも非常に多いご相談です。

実はこの状態、
単なるお腹の不調ではなく「慢性的な病気」が隠れているサインであることも少なくありません。

下痢が続く原因を詳しく知りたい方へ

慢性的な下痢の原因として多い病気を、個別に詳しく解説しています。

「うちの子はどれに当てはまる?」という視点で、気になるものからご覧ください。

良くなったり悪くなったりを繰り返す場合
→ 慢性腸症の可能性があります
 ▶︎慢性腸症について詳しく見る

体重が減ってきている場合
→ 消化管型リンパ腫の可能性もあります
 ▶︎ 消化管型リンパ腫について詳しく見る

まだ若齢、迎え入れた時からお腹が弱い場合
→繊維反応性腸症や原虫・寄生虫感染の可能性が疑われます。
 ▶︎繊維反応性腸症について詳しく見る
 ▶︎ジアルジア症について詳しく見る

④ご飯は食べているのに痩せる・淡色の大量の下痢をする場合
→ 犬では膵外分泌不全の可能性が疑われます
 ▶︎膵外分泌不全について詳しく見る

犬がストレスで悪化する場合
→ 非定型アジソン病の可能性も考えられます
 ▶︎非定型アジソン病について詳しく見る

猫で食欲はあるのに痩せてくる場合
→甲状腺機能亢進症の可能性も考えられます。
 ▶︎猫の甲状腺機能亢進症について詳しく見る

※気になる項目があれば、先に詳しいページをご覧ください

下痢が「治らない」とはどのくらい?

一般的に、

  • 2週間以上続く
  • 改善と悪化を繰り返す

このような場合は「慢性下痢」と呼ばれます。

ここまで続くと、
体の中の仕組み(消化・免疫・ホルモン)に問題があるケースが増えてきます。

下痢のタイプで原因は変わります

同じ下痢でも、原因は大きく2つに分かれます。

小腸性下痢

  • 便の量が多い
  • 回数はそれほど多くない
  • 体重が減りやすい

大腸性下痢

  • 回数が多い
  • 粘液や血が混じることがある
  • しぶる仕草がある

この違いは、診断のヒントになります。

犬・猫で「下痢が治らない」主な原因

ここからは、実際によく見られる原因を紹介します。

① 慢性腸症(CE)

慢性腸症は、犬猫の慢性下痢で最も多くみられる原因のひとつです。

腸に慢性的な炎症が起こる疾患群であり、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)や、食事・細菌に対する免疫反応の異常などが関与していると考えられています。

症状としては、慢性的な下痢や嘔吐、食欲低下、体重減少などがみられますが、「良くなったり悪くなったり」を繰り返す経過をたどることも多く、長期間悩まされるケースも少なくありません。

治療では、食事変更(除去食や加水分解食)、整腸剤、(抗生剤)、プレプロバイオティクス、ステロイドや免疫抑制剤などを組み合わせながら管理していきます。

また、慢性腸症は単一の原因で発症する病気ではなく、遺伝的素因を背景に、腸内細菌、食事、粘膜免疫、腸管バリア機能など複数の要素が複雑に絡み合って生じる「消化管の恒常性破綻」と考えられています。

▶︎慢性腸症について詳しく見る

② 消化管型リンパ腫(腫瘍)

消化管型リンパ腫は、犬猫のいずれでも認められる「腸に発生するがん」です。

リンパ腫には、進行が速く予後不良となりやすい「大細胞性リンパ腫(高悪性度リンパ腫)」と、慢性腸症との鑑別が難しい「小細胞性リンパ腫(低悪性度リンパ腫)」があります。

特に小細胞性リンパ腫では、症状が慢性腸症と非常によく似ており、慢性的な下痢や嘔吐だけがみられることも少なくありません。そのため、飼い主様からは「ただの下痢」に見えてしまうケースもあります。

また、体重減少、貧血、低アルブミン血症などを伴うことも多く、難治性の慢性下痢症例では常に鑑別に挙げる必要があります。

実際には、慢性腸症として治療されていた症例の中にリンパ腫が含まれているケースもしばしば認められます。さらに、小細胞性リンパ腫として経過をみていた症例が、後に大細胞性リンパ腫へ進行するケースも報告されており、慢性炎症からリンパ腫への連続的な病態スペクトラムの存在も示唆されています。

▶︎ 猫の消化管型リンパ腫について詳しく見る
▶︎ 犬の消化管型リンパ腫について詳しく見る
▶︎難治性慢性腸症の鑑別について詳しく見る

③繊維反応性腸症

繊維反応性腸症は、比較的若齢の犬猫でみられることが多いタイプの慢性腸症です。

食事に食物繊維を追加することで下痢が改善することが特徴で、特に大腸性下痢を示す症例でよく認められます。

また、臨床現場の印象としては、飼い始める以前、つまりペットショップやブリーダーの段階から下痢を繰り返していたという経過を持つ症例も少なくありません。

腸内細菌叢の未成熟やストレス、食事内容など複数の因子が関与している可能性が考えられており、適切な食物繊維の補充によって腸内環境や便性状が安定するケースがあります。

▶︎繊維反応性腸症について詳しく見る

④感染症|寄生虫・原虫(ジアルジアなど)・ウイルス

寄生虫、原虫、ウイルスなどによる感染症も、慢性下痢の重要な原因のひとつです。

特に若齢の犬猫で多くみられますが、成犬・成猫でも感染が持続し、慢性的な下痢の原因となることがあります。

感染症を疑うポイントとしては、

  • 新しく子犬・子猫を迎え入れた後、先住動物まで下痢をするようになった
  • 迎え入れる前から下痢を繰り返していた
  • 多頭飼育環境やペットショップ出身である

といったケースが挙げられます。

中でも、犬猫ともにジアルジア感染は日常診療で比較的よく遭遇する感染症のひとつです。症状が軽度であったり、一時的に改善したりすることもあるため、「なんとなく下痢が続いている」という慢性経過をとることも少なくありません。

また、子猫では猫腸コロナウイルス(Feline enteric coronavirus:FECV)感染に伴う慢性的な軟便や下痢を認めることもあります。ウイルスが変異してFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症するケースもありますので注意が必要です。

感染症では治療そのものだけでなく、環境消毒や同居動物の管理など、「再感染を防ぐこと」も非常に重要になります。

▶︎ジアルジア症について詳しく見る
▶︎腸コロナウイルスとFIPについて詳しく見る

④ 膵外分泌不全(EPI)

膵外分泌不全(Exocrine Pancreatic Insufficiency:EPI)は、慢性下痢の原因として見逃されやすい疾患のひとつです。

本来、膵臓は食べ物を消化するための消化酵素を分泌していますが、EPIではこれらの酵素が十分に分泌されなくなり、食べ物をうまく消化・吸収できなくなります。

特徴的な症状としては、

  • 食欲がある、あるいはよく食べているのに痩せる
  • 便の量が多い
  • ベタついた軟便や脂っぽい便が出る
  • 慢性的な下痢を繰り返す

などが挙げられます。

特に5歳以下の若齢犬では、自己免疫的な機序によって膵臓の消化酵素産生細胞が破壊される「膵腺房萎縮」が原因となることが知られています。

また、EPIでは腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)やコバラミン(ビタミンB12)欠乏を併発することも多く、単純な消化不良だけでは説明できない複雑な病態を呈することがあります。

診断にはTLI(Trypsin-like immunoreactivity)検査が重要であり、適切な消化酵素補充によって劇的に改善するケースも少なくありません。

▶︎膵外分泌不全について詳しく見る

④ 内分泌疾患

内分泌疾患も、慢性的な下痢や嘔吐の原因として重要です。

代表的な疾患としては、犬では「非定型アジソン病(副腎皮質機能低下症)」、猫では「甲状腺機能亢進症」が挙げられます。

これらの疾患では、必ずしも典型的な症状が出るとは限らず、

  • 下痢だけ
  • 嘔吐だけ
  • 「なんとなく体調が悪い」

といった消化器症状のみで来院するケースも少なくありません。

犬の非定型アジソン病では、ストレスをきっかけに症状が悪化することがあり、元気消失や食欲低下、慢性的な消化器症状を繰り返します。

一方、猫の甲状腺機能亢進症では、

  • 食欲はあるのに痩せてくる
  • 落ち着きがなくなる
  • 鳴き声が増える
  • 性格が変わったように見える

といった変化を伴うことがあります。

いずれも通常の血液検査だけでは確定診断ができず、T4測定やコルチゾール関連検査など、特殊な血液検査が必要となります。

▶︎犬の非定型アジソン病について詳しく見る
▶︎猫の甲状腺機能亢進症について詳しく見る

すぐ受診すべきサイン

以下の症状がある場合は、早めの受診および精査をおすすめします。

  • 2週間以上 続く/繰り返す下痢
  • 1週間までの対症療法(整腸剤や下痢止め)に 反応しない/投薬終了後に再発する下痢
  • 体重が減ってきている(基礎体重の10%前後)
  • 食欲低下や嘔吐など他の症状も伴う
  • 若齢または高齢である

「様子見」で長引くほど、もしくは中途半端な治療そのもので診断が複雑になることがあります。

どのような検査を行うのか?

慢性下痢では、原因によって治療方針が大きく異なるため、原因を一つずつ除外していくための検査が必要になります。

実際には、

  • 血液検査:一般的なスクリーニング検査
  • 超音波検査:腹部スクリーニング検査
  • 糞便検査:直接塗抹、ジアルジア抗原検査、糞便PCR検査など
  • 特殊血液検査:T4、コルチゾール、TLI、コバラミン/葉酸測定など
  • 上部・下部内視鏡検査:病理組織学的生検、クローナリティ検査など

を組み合わせながら原因を調べていきます。

内視鏡検査を実施しない場合でも、これらの検査を一通り行うと、費用はおおよそ30,000〜70,000円前後になることが一般的です。

検査が必要か迷っている方へ

下痢が続く場合、

  • フードで様子を見るべきか
  • どこまで精査すべきか
  • すぐ治療が必要か

は状態や飼い主様の生命観によっても大きく異なります。

当院では、
これまでの検査・治療経過を踏まえて、必要な検査を段階的に行う診療を心がけています。

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辻堂・茅ヶ崎市エリアで犬猫の消化器症状でお困りの方は湘南ルアナ動物病院(湘南Ruana動物病院)までお気軽にご相談ください。